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07.10.03 UPDATE

木工職人の手による、
温もりの伝わる万年筆

 万年筆に使われる素材の多くはレジンだろう。おそらく加工とデザインのしやすさ、耐久性からだと思われる。その一方で最近増えてきたのがボディ(胴軸)部分に木材を使った筆記具である。使われる木材もさまざまで、ペルナンブコ、エボニー(黒檀)、ローズウッド、グラナディラ、梨の木、椰子の木など、硬質のものから手にフィットしやすいものまで幅広い。不思議なものでボディが木材になるだけで素朴な雰囲気に様変わりしてしまう。
  今回紹介するシュテファン・フィンクも木材を使った筆記具を製作するブランド(であり製作者の名前)であるが、年間僅か150本という超少量生産である。手で1本1本削っていくため大変時間がかかり、仕上がった製品はどれも微妙に表情が異なる。手にしたときのフィット感も量産品とは明らかに違う。
  シュテファン・フィンクは北ドイツのハンブルクに工房を構える木工職人である。父はこの地でチーク材の商売を営んでいたというから、もともとも木材には慣れ親しんでいたのである。1977年に中学を卒業して木製家具などの工房で研修し、職人になってからもハンブルクとミュンヘンの工房で技術を磨いている。1982年にハンブルク国立芸術大学 工業デザイン科に入学し6年後に卒業。1987年(29歳の頃)に自らの工房を設立している。独立直後、木こそ万年筆に最適な素材であることに気づき、入念な手仕事でしか作れないこともわかったという。1988年以降、木製の手作り筆記具と、特注家具作りに専念する。それにしても彼は地道に努力する人間のようだ。もともと才能があり、努力で技術を磨いていくタイプでないと一流の木工職人にはなれないのかもしれない。2004年にはバイエルン州賞、2005年にはイウスチュス・ブリンクマン賞を受賞するなど、その実力が認められている。
  面白いことに筆記具の作品名には、アホウドリ、ムクドリ、ウグイス、コウノトリといった鳥の名前が付けられている。彼の名前の「Fink」はスズメに似たアトリのことなので、鳥にこだわったネーミングになっている。ちなみに18金のペン先にはこのアトリが刻まれている。ペン先は専門外であるためハイデルベルクの老舗ボック社がシュテファン・フィンク用に製作している。現在使用している木材は、アフリカンブラックウッド/グラナディル、南米産スネークウッド、ブラジル産ローズウッド、南米産ペルナンブコ、南米産アマラント、紫檀など。どれも高級筆記具に欠かせない硬質の木材で、時間をかけて自然乾燥させたものを使っている。というのも、これらの木材の仕入れから乾燥、筆記具の製作までシュテファン・フィンクが一人で行っているため、厳選した木材を最高の状態にまで昇華させてから使うことができるのである。こうして妥協せずに作られた筆記具はドイツを中心にヨーロッパのデザイナーや建築家、作家らに根強い支持を得ている。もちろん筆記具コレクターにとっても魅力的な1本である。

文:倉野 路凡 写真:綿屋 修一

Stefan Fink(シュテファン・フィンク)

アイテム:万年筆
モデル名:アホウドリ、ムクドリ、ウグイス
胴軸&キャップ:アホウドリ/アフリカンブラックウッド、ムクドリ/スネークウッド、ウグイス/ペルナンブコ
ペン先:18金 アトリが装飾/細字、標準、太字、美麗字用
インク吸入方式:吸入式
製造国:ドイツ ハンブルク シュテファン・フィンク工房製
価格:14万〜20万円

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