アクセサリー

08.04.15 UPDATE

絶妙ミシンステッチから生み出されたエレガンス

 日本人には手縫い至上主義者が少なくないが、はっきり言って、下手な手縫いならミシン縫製のほうがはるかにいい。素晴らしい手縫いに出会うことがあるいっぽう、番手の選び方が不適切だったり、ピッチが乱れていたり、糸締めが不十分だったり、始末が雑だったり、といったいいかげんな手縫いを目にすることもあり、うんざりしてしまう。だが、ステファノマーノのステッチは本当に素晴らしい。ミシン縫製なのに!
 ステファノマーノの鞄を最初に目にしたのは4年ほど前のこと。「きれいな鞄だな」というのが第一印象だった。その「きれい」というイメージは使われている素材やデザインのバランスなどによってもたらされるものだが、実は縫製によるところも大きい。どんなに高級な素材を使っていても、縫製が雑だと製品全体から品が失われてしまうのだ。いっぽう、ステファノマーノのミシン縫製は美しく整っており、佇まいに品があり、それでいて味があるのだから不思議だ。
 実は、このブランドの前身はミシンの販売会社らしい。まぁ、販売会社がメーカーになった例はちょっと珍しいのではないだろうか。創業者のカリノ・ガスパローニ氏が木枠の鞄を製作したのが事始めで、それが高じてか、1974年に鞄のパーツ生産からスタート。本拠地はイタリアのアドリア海側の町アンコナ近郊だ。'78年頃には鞄作りも本格化し、一流ブランドのOEMなどを手掛けるように。そして2004年、カリノ氏の次男でバッグデザイナーのステファノ氏の意向から自社ブランド、ステファノマーノが立ち上げられ、本国イタリアに先駆け、4年前に日本上陸を果たした、という次第だ。
 このブランドの特徴の第一は素材であろう。ナイロンやコットンは伊リモンタ社に独自に別注したものを使用。革はヴァルダノ社やワルピエ社(「ブッテーロ」というオイルドレザーで有名だ)など、皮革の一大生産地トスカーナ地方にある一流タンナーのAランクの革を選び、コンディションのよい部分のみを使用する、というこだわりだ。
 また、企画やデザインから検品までを完全自社一貫生産で行っている点にも注目したい。これにより製品管理が徹底され、品質を均一化できるからだ。しかも技術者は過去に鞄販売などの経験をもち、同社で製鞄を10年以上務めてきたベテランばかりだという。
 だが、このブランドの最大の特徴は前述したように、やはりミシン縫製にある。例えば、胴に施されるステッチ。一般のイタリア鞄では20番手の糸が多く使われるが、ステファノマーノでは、より太い10番手を選択し、それ用の特殊なミシンで縫製している。この10番手用のミシンは難度の高い技術が必要となるうえ、スピードが遅い。しかし、同社ではステッチを引き立たせるため、あえて低速できっちりと打ち込んでおり、したがって1個を縫い上げるのに、20番手の鞄の3倍以上の時間を要している。しかも、最も修理になりやすいといわれるハンドル取り付け部分では二重にタタキを入れ、より強固なものに。始末の処理も美しく、糸切りはコテを使い、その切り目が目立たないよう配慮。外側からでは見えない生地裏で糸を結ぶ場合は、単に留めるのみならず、その結び目を糊付けしてほぐれを防いでおり、また、胴のコーナーなどに施されるカンヌキでは0番手の糸を使い、手作業で堅牢に処理している。と、このように部位ごとに最適な番手やピッチを選び、ミシンを使い分けながら丁寧に縫い上げることで、端正で品ある鞄ができあがる、というわけなのだ。
 ところで、ステファノマーノの売れ筋といえば、ナイロン×レザーの「グリーン」、リモンタ社製コットン「アデレード」×レザーの「スポーティング」、オールレザーの「ゴルフ」の3シリーズであろう。面白いことに、同デザインで同サイズなのに素材が違うため、異なるシリーズにカテゴライズされる場合があって、例えば、定番ブリーフケース「107」などは3シリーズのいずれにも存在している。
 写真のビジネストート「371」は見てのとおり、ナイロン×レザーなので「グリーン」シリーズにくくられる。色鮮やかで光沢の美しい、このナイロンはリモンタ社の有名な高密度ナイロン「デイビス」にコットン主体の裏打ち(ボンディング加工)を施した別注素材「ダボク」だ。この加工により、見た目は繊細ながら耐久性がさらに向上。しかもハリがあるため、胴のレザーパイピングなどと相まって鞄がしっかり自立する。また、革は伊イタルペレ社製のタンニンレザーで、これも風合いに品があり、だが、耐久性に富む高級素材だ。
 ハンドルは一般的な樹脂の芯材ではなく、天然コットンを再生したものを使用しているため、握りが柔らかく、使うほどに手によく馴染んでいく。また、各レザーパーツに施されたコバ磨きも美しく、これもまた縫製とともに、この鞄をエレガントに見せる重要な要素となっている。構造はシンプルで、しかも軽量。ジップトップ式ながらジッパーステイ付きなので大きく開口。書類の取り出しもスムーズである。
 ところで、ステファノマーノはイタリアのバッグブランドの中では新参ゆえに、まだまだ知名度が低い。したがってブランド重視の方には興味のない存在ではあろう。しかし、品質重視の鞄好きの間では評価が高く、このところジワジワと人気上昇中の模様なのだ。長々と説明してしまったが、とにかく、その良さはぜひ実物を手に取ってご確認を(ことに、そのミシン縫製の妙技に!)。

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

STEFANO MANO(ステファノマーノ)

アイテム:ジップトップ付きビジネストートバッグ
シリーズ名:GREEN(グリーン)
モデル番号:371
品番:SOMH6K17
外装:伊リモンタ社製高密度ツイルナイロン「DAVOK(ダボク)」×伊イタルペレ社製タンニンレザー
内装:コットン
収納部:メインコンパートメント1室(オープンポケット1室、携帯電話ポケット1室、ペンホルダー2本分内蔵)
金属パーツ:ニッケル製
付属品:ナイロン製ショルダーストラップ
サイズ:W44×H31.5×D11cm
カラー:ブラック、アイボリー、ブラウン、オレンジ、ネイビー、サックスの6色展開(以上、全てナイロン部分のカラー)
製造国:イタリア
価格:5万5650円

お問合せ:
ヤマニ TEL.03-3862-0821
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