アクセサリー

08.09.30 UPDATE

新進ブランド、ベラゴの財布は生真面目なのに色っぽい!

 ITバブルが過去のものになり、サブプライムローン問題などで株や金融への信頼が大きく失墜した現在、日本の中に"技術立国"へと立ち返ろうとの機運が高まっています。そして、そこには日本人職人と彼らの高い技術をリスペクトしようという意識も含まれているのです。
 本サイトでも過去、何度か記してきましたが、高級革小物の世界では、少なくとも日本製品のクォリティは疑いなく世界随一です。これはナショナリズムを差し引いて、客観的に見ての結論。もちろん日本の革製品業界でも、このことは"常識"と認識されているのですが、それを声高にしないのが、これまた"日本的"なのでしょう。
 ところで、そうした職人技の多くの部分を根底で支えているのは、自宅の片隅でコツコツとモノづくりに勤しんでいる"町のおやじさん"なのかもしれません。つまり、これは近代以前から続く伝統的な家内工業の世界。ITや株のような"大当たり"はないけれど、自らの腕を信じ、よりよいモノを作ろうと励む職人と、その仕事ぶりを認め、重んじる人々の控えめで堅実な暮らしがここにあります。
 そんな革小物職人の世界にも、最近は頼もしい新鋭の登場を見ることができます。神戸発のブランド「ベラゴ」を主宰する牛尾龍(うしおりゅう)氏もまた、そうした職人のひとりといえるでしょう。
 牛尾氏は同地の出身で、母親が製甲(靴のアッパーや芯材、ライナーなどの各パーツをミシンで縫合する工程のこと)の職人という家庭に育ったことから、幼少期からミシンに慣れ親しんできたそうです。24歳のとき、自分用の鞄を製作したところ、ミシン縫製に抵抗を感じることなく、すんなりと出来上がったことから一念発起。大阪の鞄職人のもとに弟子入りし、鞄製作のノウハウを学んだのだそうです。
 そして2004年に独立し、自ら手掛ける鞄と革小物のブランド、ベラゴをスタート。実は筆者はまだ、このブランドの鞄は目にしたことがないのですが、定番のトートやショルダーバッグをはじめ、カジュアルからビジネスまでさまざまなタイプを製作しているとのこと。今のところ、鞄も革小物もマーケットは関西地方が主で、東京ではほとんど目にする機会がないのが残念です。
さて、ここで、そのベラゴの新作をご紹介しましょう。
 これはコインケース付きの二つ折りウォレットで、もちろん100%牛尾氏の手によるものです。このブランドは、伊バダラッシ社のバケッタ製法レザーや伊ワルピエ社のオイルドレザー「ブッテロ」など、表情や色に深みのある最高級タンニンレザーを積極的に採用しており、本品でもベルギーの名門高級タンナー、マシュア社のプルアップサドルレザーを、外板にはもちろん、内づくり(見開き部分)や各ポケットのライナーにも惜しまず使用しています。この革はフルタンニングでなめされ、オイルの芯通しが施された成牛のショルダー革で、使い込むとツヤと色がさらに深まり、やがてプルアップ、すなわち指先で革を裏側から押すと、芯通しされたオイル分が繊維内で動き、押した部分が白く見える、という特性をもっています。にもかかわらず、革の表面はベトついておらず、その手触りは柔らかく、サラリとしているのが不思議です。また、牛尾氏によれば「深い表情と色気が感じられる」との理由から、今回、この革を採用しているのだそうです。ちなみに一部のポケット内には、摩耗に強く、このマシュアの革と相性のよい国産ピッグスキンが使用されています。
 ところで、このブランドの本懐は、やはり縫製にあるといえるでしょう。たとえばピッチが正確で、糸留めなど始末の処理にも手抜かりがないのはもちろんのこと、あえて通常よりやや細番手の糸を使い、それに呼応させるべく、これまた通常よりもややハイピッチで縫うことで、堅牢性を損なうことなく、繊細さを表現。ミシン縫製の卓越した技術があってはじめて可能となる、これはベラゴの最大の魅力なのです。また、切り目のコバに施された仕上げも大変美しいものです。ベルト用の耐久性の高い顔料を採用しつつ、自らツヤと粘度を調整。磨きにも本磨きレベルの手間を費やしており、結果、この財布全体の印象をシャープ、かつエレガントにしています。
 デザインはベーシックなのですが、各カードポケットの間口が波形にカットされている点がユニークです。カードを引き出しやすくするため、まれに間口に小さな"あおり"を設けた財布を見かけますが、本品では波形にすることで、それをあおりの代わりにしているのです。しかも牛尾氏によれば、カードが収めた際の流線の見え方にも配慮。また、カードッポケットの深さ、それらポケット同士の距離、コバと焼き念との距離など細部まで綿密に計算し、デザイン。そして、これらカードポケットと対をなすよう、コインポケットのフラップにも波形のシルエットを導入。それを留めるためのスナップがフラップの中心ではなく、右寄りに取り付けてあるのですが、これがコロンブスの卵といいましょうか、なかなかよいアイディアで、指をフラップに掛けやすく、大変使い勝手がいいのです。
 と、このように素材といい仕立てといい、またデザインといい、牛尾氏のさまざまなこだわりと工夫がうかがえる、この財布はまさに日本の職人の手になる、美しく高品質な革小物。でありながら、実はちょっと不思議なのは、そのたたずまいにどこかイタリア的味わいが感じられるという点です。聞けば、ちょっと色っぽさが感じられるようなモノづくりを目指しているとのこと。クォリティは高いけれど、生真面目すぎて色気がないとされるメイド・イン・ジャパンですが、ベラゴのこの財布は、その両方をしっかり兼ね備えた極上の革小物といえるでしょう。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

内づくりにも外板と同じ最高級プルアップサドルレザーを贅沢に使用。また、各カードポケットの流線を活かしたデザインと対をなす、コインポケットのフラップを留めるスナップが外寄りにあるのもユニークだ。

札室内に中仕切りが設けられているので、紙幣の分別が可能。インテリアは外装や内づくりと同じ最高級プルアップサドルレザーでライニングされ、中仕切りはその革とピッグスキンのコンビネーションとなる。

BELLAGO(ベラゴ)

アイテム:コインケース付き二つ折りウォレット
品番:SABWCC02
素材:外板=ベルギー・マシュア社製プルアップサドルレザー。内づくり=外板に同じ。ポケットライナー=外板に同じ(札室中仕切り裏、及び隠しポケット内には国産ピッグスキン使用)
収納部:札室1室(中仕切りを装備)、コインポケット1室、カードポケット4室、レシートポケット2室、隠しポケット1室
サイズ:W11×H9.5cm(閉装時)
カラー:ブラック、チョコの2色展開
価格:34,650円

お問合せ:
ベラゴ TEL.078-641-0411
http://www.bellago.jp
(2008年10月中旬にサイトアップ予定)