アクセサリー

10.01.05 UPDATE

独自開発のベタ貼り技術が可能にした
究極の薄造りが堪能できる革小物の逸品

MAISON de HIROAN(革包司 博庵)

某雑誌の企画で、撮影現場に十数個の束入れ(長財布)が集められたことがありました。それらのなかに革包司 博庵(以下、ヒロアンと記述します)の製品もあったのですが、名だたる高級ブランドのインポートものなどと比較して、その薄さとしなやかさに圧倒されてしまいました。なにしろ、その違いたるや歴然でしたので、スタジオにいたスタッフ全員がヒロアンの製品クォリティの高さに素直に納得したものでした。
知る人ぞ知る存在のヒロアンは、おそらくは現存する日本最古の革小物工房である「革包司 博庵」の3代目当主で、キャリア38年の長谷川博司氏が主宰するオリジナルブランドです。東京・浅草に庵を構え、紳士用革小物を専業にしてきた同工房は、創業が明治39(1906)年といいますから、すでにその歴史が100年を超える正真正銘の老舗です。当然のことながら物心ついた頃から革小物に親しんできた長谷川氏は生粋の職人であり、しかも極めて研究家肌の人物でもあります。伝統的な「紳士用革小物は薄くあるべき」との思想を追求すべく、およそ2年の歳月を費やして特殊なベタ貼りの技術を編み出し、極限的な「薄造り」を実現するなど、他社が模倣できないさまざまな技術を我が物にしてきました。
写真は、いずれもそのヒロアンの超絶的な技術の一端をうかがえる封筒型名刺入れです。大変シンプルな小物なのですが、これらにもそのベタ貼りの技術が生かされており、手に取れば、その薄さに驚かされます。
「ベタ貼り」とは全面糊貼りのことですが、通常、コシを出すためと耐久性を高めるために施される技術です。ヒロアンでは究極的な薄造りを可能にすべく、互いに貼り合わせる革をいずれも0.5mmという極薄に漉き入れし(ただしクロコダイルの場合、革の性質上、0.8mm厚に留められています)、それらを数十tもの圧をかけることができる特殊アイロンなどを使い圧着させているのですが、その際に使用しているのが、独自開発によるオリジナルの糊なのです。長谷川氏は「ベタ貼りの研究は、すなわち糊の研究だった」と振り返っていますが、この粘性の少ない水性糊は揮発性成分が含有されていないため、革を傷めることなく革の繊維内に浸透。それぞれの革に入り込んだ糊同士が確実にくっつき合い、かつ乾燥すればさらに接着力が高まるという性質をもっています。しかも他社製品のベタ貼りによく見られるような革の浮きやヨレ、歪み、堅さ、ゴワつきが全くなく、2枚貼り合わせでありながら、まるで一枚の革のように柔らかくしなやかに仕上がるのです! 前述しましたように、撮影現場にいたスタッフ一同が納得したのは、このベタ貼りされた革のしなやかさが他社製品とは明らかに違っていたからなのでした。しかもベタ貼りにより、たとえ極薄に漉いた革でも耐久性、堅牢性が犠牲にされることはなく、今までに「はがれた」というクレームがただの一度もないというのですから、ただただ驚くしかありません。
なお、これら名刺入れのコバはいずれも切り目(革の裁断面を見せた状態のことです)に布を使って手磨きで仕上げられています。高級革小物に多用される切り目仕上げですが、その多くはコバ面に塗料が塗布されています。しかし、ヒロアンでは日本伝統の本磨きを堅持。コバに控えめに丸みをつけたうえで染料を塗布した後、磨きを入れて表面張力を出し、そこに本塗りを施し、さらに丹念に磨きを入れていくという手間暇のかけようです。これにより切り目は上品でナチュラルな表情に仕上がり、かつ剥離などのない耐久性の高いものとなるのですが、なにぶん非常に手間がいるため、今日、この本磨きを採用するブランドは非常に稀となってしまいました。
ヒロアンの技術には、このほかにも素材選びや縫製、念引きなど注目すべきさまざま点があるのですが、原稿の指定字数をとっくにオーバーしてしまったので、他のことはまた、別の機会に・・・・。
最後にひとこと。価格も、厳選された高級皮革を使用しているにしてはリーズナブルですから、ぜひ、一度、これら名刺入れを入手し、その"薄造り"ながらも美しく重厚な存在感を体感してみてください。

文:山田 純貴 写真:猪又 直之

元来が非常に厚口のエレファントレザーを0.5mmまで漉き、そこに同じく0.5mm厚のカーフを独自の技術でベタ張りすることで、極限的な薄さを可能にしている。また、その切り目に施された手磨き仕上げもまことに美しい。

MAISON de HIROAN(革包司 博庵)

アイテム:封筒型名刺入れ
サイズ:W11×H6.5cm ※マチなし
表版素材:下記参照
内造り素材:博庵オリジナル国産角シボ入りカーフ
製造国:日本

■表版素材4タイプ(写真手前から)
1.エレファント(象革) ブラック、グレーの2色展開。1万8900円
2.オストリッチ(ダチョウ革) 参考商品
3.リザード(トカゲ革) ブラック、キャメル、チョコ、ネイビーの4色展開。1万5750円
4.クロコダイル(ワニ革) オイルマット仕上げ。ブラック、チョコの2色展開。2万9400円

お問合せ:
革包司 博庵
TEL.03-5833-7166
http://www.hiroan.co.jp

※この情報は、2010年1月5日の情報です。