メンズシューズ

07.09.28 UPDATE

老舗のこだわりが可能にした超絶仕立てのノーブルなブーツ

 メイド・イン・ジャパンの再評価はいいけれど、最近は深い検証もなく称賛する風潮が目立ち、それはそれで「ちょっとイヤだな」と思っている。だが、大塚製靴の靴職人が手仕事で仕立てる靴のクォリティは嘘いつわりのない見事なもので、大袈裟ではなく、これぞ世界に誇れるメイド・イン・ジャパンだと言いたい。
 大塚製靴は製靴技術を学んだ弱冠13歳の大塚岩次郎氏が1872(明治5)年、東京・芝露月町で創業した大塚商店をルーツとする。同氏は宮内庁の高官が所有していた英国靴を、了解を得たうえで解体するなどし、靴の研究に勤しんだというが、これが縁となったのか、1882年には宮内庁御用達となり、明治天皇など皇族たちの靴を手掛けるようになった。また、日本製靴(現リーガル コーポレーション)が陸軍の靴を生産していたのに対し、大塚商店は海軍用軍靴の製造を担ってもいる。
 ところで日本の靴史上に大きな役割を果たしてきた大塚製靴が、2002年にオーダーメイド(ビスポーク含む)中心のシューズサロンとして開設したのが「OTSUKA M-5」だ(M-5とは創業年である明治5年に由来)。
しかも、それはオーダーメイドシューズの技術を活かしつつ、そこに時流を融合させた高級レディメイドに冠されたブランド名でもある。そして写真のボタンブーツは、そのコレクションを代表する1足なのである。
 今日の私たちには大変斬新に見えるボタンブーツ(グランパブーツとも呼ばれる)は、実はすでにビクトリア朝後期に登場し、後に欧米各国で大流行した伝統的なデミブーツだ。1907年に発行された大塚商店のカタログでも筆頭に掲載されているが、ここでご紹介のボタンブーツはそのカタログを参考に、それをモダナイズさせ復刻したものだ。しかも仕立ては当時と変らぬ手仕事によっている。
 そうしたディテールはホームページに詳しいのでここでは多くは述べないが、ボタンホールのかがり縫いはその好例として上げておきたい。なにしろ着脱されるたびに摩耗などの負荷がかかる部位ゆえに、本品では職人の手仕事により、糸で巻くようにして止めるかがり縫いをしているのだが、革にこのステッチを美しく施すのは非常に難しく、現在、これができるメーカーは世界でも数社しかないといわれるのだ。
 また、ハナ留め(カンヌキ、リップストップ、スレッテドステイなどとも呼ばれる、羽根付け根部分の補強)では「シャコ止め」なる、手編みの糸を用いる 手法を導入。確実な補強を可能にしているのだが、この仕立てができる職人もまた稀であるという。あるいはコバに3cmの間に約12針というアウトステッチが施されているが、グッドイヤー靴の本場、英国の既製靴でもこれだけ細かいピッチは見受けられない。そして、そのコバのヤハズ(矢筈)仕上げも一般に見られる単純な「く」の字状の削り落としではなく、緩い曲線を画くように削ることで先端をより鋭角的に見せた、真正のヤハズ仕上げなのである。
 と、事程左様に各所に大塚製靴でなくばなし得ない、数々のこだわりのディテールが見て取れるOTSUKA M-5のボタンブーツ。ある種の高尚さ、気高さを身にまとうこの美靴こそ、ためらいなく誇れるメイド・イン・ジャパンといえよう。なお、アンダー8万円という、このクォリティからすると実にお値打ちな価格も誠に嬉しい。

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

OTSUKA M-5 (オーツカ エム・ファイブ)

アイテム: ボタンブーツ
品番: M5-102
製法: グッドイヤーウェルテッド
木型: B-715
ウィズ: EE
アッパー: フレンチカーフ
ライナー: 混合なめしによるフレンチカーフ
ウエルト: 12針/3cmピッチのアウトステッチ、ヤハズ仕上げ
ソール: シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕立て、ロールウエスト、半カラス仕上げ)
ヒール: 半化粧、ピッチドヒール
カラー: ブラック×グレースエード、ダークブラウン×ブラウンスエードの2色展開
価格: 7万8750円

お問い合わせ:

大塚製靴
TEL.03-3431-5189