メンズシューズ

07.10.27 UPDATE

新進ドメスブランドの製品がブーツに特化している理由とは?

 ヨーロッパの老舗シューメーカーのロゴなど見ると、そこに「Boots Maker」といった記載があるに気づくことがある。「短靴も作ってるのになんで?」と疑問に思っている人も少なくないはずだ。しかし欧米においては、元来、ドレスシューズは短靴ではなくブーツ、それも黒のブーツというのが"常識"だったのだ。たとえば紋付き袴に靴を合わせた姿で写された坂本龍馬の写真を見れば、その靴がブーツであることがわかるだろう。だが、19世紀後半に入ってマッケイやグッドイヤーなどの機械製法が出現すると、次第に既製靴の需要が拡大。それにともない、短靴が支持されるようになった。したがって、それ以前からベンチメイドで靴を作っていた老舗は今もなお、自社のアイデンティティがブーツメイキングにあると考えているわけなのだ。
 元シューリペアの技術者というキャリアを持つふたりの新鋭気鋭の靴職人が今年7月に立ち上げた新ブランド「ブラス」は、日本では大変珍しいブーツ専門のシューメーカーである。型紙作成、革の手裁ち、製甲までを25歳の佐藤正兼氏が、吊り込みやウェルティング、ボトムステッチなどを29歳の松浦稔氏が担当。コンセプトは「男のストイックブーツ」であるという。すなわち、彼らはフォーマルウェアにおけるモーニングコートやテイルコートのような、伝統的なネオクラシカルなフォーマルシューズを今に復古させることをモットーに掲げているのだ。具体的には、デザインは「ブーツのみ」、色は「黒のみ」、木型は「ラウンドトゥのみ」、製法は「ハンドソーンウェルテッドのみ(ただしボトムステッチは機械縫い)」という思いきりのよさである。ちなみに現状、既製靴の展開はなく、パターンオーダーによる受注生産のみというのもオーダーメイドシューズの時代にならったものといえる。
 そこで写真のサンプルシューズの2型を検証してみると、第一に、既製靴ではまず見ることのないエレガントなプロポーションに驚かされる。ヴィンテージのビスポークブーツを思わせるロングノーズの細身スタイルで、しかもトップラインが高く、シャフト(足首を包む筒部分のこと)が長く、そのシャフトが後方に大きく傾いているのだ。これにより、ヴァンプからトップに至る傾斜は穏やかなものとなり、靴全体のシルエットがなんとも美しいものとなっている。また、足入れすると、レースアップ・タイプではちょうどレースステイ付近に深いシワが入るのだが、その姿がまた、ヴィンテージブーツを想起させる。さらに、そのレースステイのある羽根革も後方に下げ、トゥキャップを長めとしているのは、パンツの裾下からのぞく靴をよりスタイリッシュに見せるための工夫だ。
前から見ると、これまたビスポークよろしく、内絞りの木型だということが理解でき、底側から眺めれば内振りのコンフォタブルな形状で、内踏まずも極限まで絞られた、いわゆるヴェヴェルドウエストであることがわかる。また、日本人の足形にフィットするようヒールカップを小ぶりにし、トップホールも小さくすることで足首とかかとでしっかりと足をホールドする構造である。ちなみにアッパーのボックスカーフは繊維のきめが細かい良質なもので、非常に柔らかく、風合いに品があるのが好ましい。
ところで、往年のヴィンテージブーツのような気品と上質さを併せ持ち、かつ若手ながら日本の職人らしいきめこまやかな手仕事が実感できる、このブラスのブーツは、しかし単なる復古趣味のアイテムではなく、日頃から履き込んでエイジングを楽しみたい実用靴なのである。しかも上記で述べてきたように、他社製にはないさまざまな個性的エッセンスを体感できるのが嬉しいのである。靴通や洒落者であれば、ぜひ履き込んでみたくなる逸品なのだ。

■パターンオーダーの概要
採寸: サイズアジャスト用シューズなど使用
製法: 九分仕立て(ハンドソーンウェルテッド製法で、アウトステッチのみ機械縫い)
木型: ベーシックラスト(ラウンドトゥ・タイプのみ)をもとに個々人ごとに微調整
デザイン: 全てブーツのみ。内羽根タイプ4型(キャップトゥ、パンチドキャップトゥ、セミブローグ、クォーターブローグ)、外羽根タイプ4型(キャップトゥ、パンチドキャップトゥ、セミブローグ、クォーターブローグ)、ジョドファータイプ1型から選択可
アッパー: 基本素材はブラックカーフ(ワインハイム社製ポーランドボックスなど)
アッパーカラー: ブラックのみ
ライニング: ベージュカーフ
ソール: 基本仕様はシングルレザーソール(ヒドゥンチャンネル仕立て、内踏まず丸コバ)
ヒール: トップピースDove
製作期間: 約2か月 ※仮縫いなし
価格: 基本料157,500円 ※各オプション料金は下記参照
※アッパーオプション: メダリオン3種類 無料、ハトメ3種類 +3,150円、フック3種類 +3,150円、ジョドファーバックル3種類 無料、ジョドファーストラップ異素材(ガルーシャ、リアルリザード、型押しクロコ) +5,250円、イニシャルブローグ1カ所 無料、シームレスヒール +3,150円、シューレース2種類 無料、木型調整(片足) +3,150円
※ソールオプション: ダブルソール +3,150円、スペードソール +3,150円、トライアンフスティール +4,200円、ハーフラバーソール +3,150円、ダイナイトソールへの変更 無料、トゥ釘打ち(つま先ネイル) 無料、半カラス仕上げ、2トーン仕上げ 無料、ヒールトップピースの変更(フィリップスラスター、ダイナイト、レザー) 無料、ピッチドヒール各種 無料

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

BRASS(ブラス)

■写真のサンプルシューズ2型の概要
(写真右)外羽根式キャップトゥ レースアップブーツ
製法: 九分仕立て
アッパー: ワインハイム社製ポーランドボックスカーフ
ライニング: ベージュカーフ
シューレース: ロウ引き丸ヒモ
ソール: シングルレザーソール(ヒドゥンチャンネル仕立て、内踏まず丸コバ)
ヒール: Dove(半化粧、ピッチドヒール)
カラー: ブラックのみ
価格: 基本料157,500円

(写真左)ジョドファーブーツ
製法: 九分仕立て
アッパー: ワインハイム社製ポーランドボックスカーフ
ライニング: ベージュカーフ
ピンバックル: 18Kゴールド無垢
ソール: シングルレザーソール(ヒドゥンチャンネル仕立て、内踏まず丸コバ)
ヒール: Dove(半化粧、ピッチドヒール)
カラー: ブラックのみ
価格: 基本料157,500円

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