メンズシューズ

07.12.22 UPDATE

全てのローファーのマスターピースにして
永遠の傑作アメカジ靴

 世界で最初期に誕生したローファー。それが米G.H.BASS&Co.(以下、バス社)の、この「ウィージャンズ」である。 ローファーとは甲にモカと呼ばれる蓋(ふた)状の革パーツをもち、馬具の鞍(サドル)のようにアッパーをまたぐように縫い付けられたベルトが設けられたスリッポン系の短靴のことだ。伝統的なモカシン(上からではなく下から木型に吊り込んでアッパーを成型するスリッポンシューズのこと)の進化型で、その原型は1920年代に英国で流行。それが新大陸に渡ってアメリカンスタイルのスリッポンへと進化するなか、その一枝がローファーというカテゴリーに結実していったわけである。ちなみにローファーとは「怠け者」という意味。レースシューズが当たり前だった当時、ヒモ調整せずに履けるスリッポンシューズは「のらくら者の靴」と見なされたのだ。
  前述したように、そのローファーのスタイルを確立させたのがバス社だった。同社は1876年、米メイン州ウィルトン市で革なめし工ジョージ・ヘンリー・バス氏によって設立。1927年、あのチャールズ・リンドバーグが大西洋横断単独無着陸飛行を成功させたとき、同社のブーツを履いていたという話もある。
  ところで「ウィージャンズ」の発売は1936年である。この靴は当時の社長ジョン・R.バス氏が、ある雑誌編集者から贈られたシールレザー(アザラシの革)製のノルウェーモカシンをヒントに開発したものだという。実は「ウィージャンズ(Weejuns)」という名称は「ノルウィージャン(Norwegian)」、すなわち「ノルウェーの」という語に由来したものらしい(今日、日本ではノルウィージャンという用語はウエルテッド製法の一種として知られている。ただしバス社の「ウィージャンズ」はモカシン×マッケイ製法なので、ノルウィージャン製法とは無関係である)。
  発売当初から人気を博したであろう「ウィージャンズ」だが、より広く認知されるようになったのは1960年代のこと。当時、一大トレンドとなったアイビールックの足元を飾るアイテムとして脚光を浴びたのだ。しかも幸運を招くからと、サドル部分のスリット(「ウィージャンズ」では「ハーフムーン」と呼ばれる形状のスリットが入っている)に1セント硬貨(ペニー)を挟むことがアイビーリーグの学生たちの間でブームになった。古来、ヨーロッパではコインにタリスマン(魔よけ。護符)としてのパワーがあると信じられてきたが、その迷信がアイビーリーガーの間でローファーのスリットと結び付いたのだろうか。このブームの結果、「ウィージャンズ」は「コインローファー」とか「ペニーローファー」と、また、そのスリットは「コインスリット」「ペニースリット」などと呼ばれるようになった。
このアイビーブームは、VANの登場によって日本にも上陸。ローファーは定番のフットウェアして人気となり、バスの「ウィージャンズ(ウィージュンとも呼ばれた)」はみゆき族たちの憧れ靴として、その存在が知られるようになったらしい。
そんなエポックメイキングな傑作靴が(メイド・インUSAではなくなったけれど)誕生から60年以上を経た今なお、現役であることがなんとも嬉しい。しかもこのところ、久々にアメリカンカジュアルの人気が再燃。アメリカンシューズも再注目されているだけに、ローファーの元祖「ウィージャンズ」の存在も改めてクローズアップされているのである。なにしろ今の視点からも色あせることなく、確かな存在感で私たちを魅了する、こんな靴はそうそうはないのだ。

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

BASS(バス)

アイテム: ハーフサドルペニーローファー
モデル名: LEAVITT PENNY(リーヴィット ペニー)※旧称WEEJUNS(ウィージャンズ、またはウィージュン)
製法: モカシン×マッケイ
モカ: おがみモカ・タイプ
アッパー: ガラスレザー
ライニング: ライニング無し
ソール: シングルレザーソール(オープントラック仕立て)
ヒールリフト: オリジナルラバーヒール
ウィズ: E
カラー: ブラック、バーガンディの2色展開
製造国: ドミニカ
価格: 1万8690円

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