メンズシューズ

07.12.30 UPDATE

ハンドソーンウェテッドの継承者、江川氏の作品には靴への深い愛がある

 昨今、靴職人を目指す若い人たちが増えているようだが、江川治氏は自ら主宰する「スナッグ・シュー・スクール」でそうした人たちに靴作りの技術と魅力を伝授する指導者であり、彼らが目標とし、リスペクトする先達でもある。控えめな人柄もあってか、その名が広く知られているわけではないが、江川氏が現在、日本でトップレベルの製靴技術を誇るシュークリエイターのひとりであることは疑いない。また、伝統的なハンドソーンウェルテッド製法(アッパーとソールの取り付けを100%手縫いで行う製靴法のこと)に深く傾倒し、その道において屈指の技術をもつ、いわばハンドソーンウェルテッドシューズの求道者でもあるのだ。そんな江川氏とその靴作りについては、当サイトの竹川圭氏によるレポート(該当ページへリンク)が詳しいので、ぜひそちらを参照して欲しい。
 さて、ここで紹介しているのはその江川氏作による、ブラウンカーフ×キャメルスエードのコンビネーションがクラシカルなウイングチップブーツである。
 これはメイド・トゥ・オーダー(セミオーダー)によるオーダーサンプルであり、「ヴィンテージライン」にカテゴライズされているモデルでもある。アッパーの各パーツの縫い合わせにミシンを使用しているほかは全てハンドメイドである江川氏の靴だが、そのメイド・トゥ・オーダーではベーシックな「スタンダードライン」と、可能な限り金属パーツや化学物質の使用を避け、古典的な製靴法であつらう「ヴィンテージライン」の2ラインが用意されていて、写真のブーツはその後者の方法で作られているのだ。
 ちなみに「ヴィンテージライン」では、たとえば革同士の張り合わせに使う糊に化学系ではなく、作業は手間を要するが革馴染みがよく、張り合わせた断面を自然に見せることのできる、小麦粉を原材料にしたナチュラルなものを使用。靴底に打ち込む釘では金属製ではなく、ペースと呼ばれる古典的な木釘を、また、土踏まずの補強芯であるシャンクには一般的なスチール製に代え、ホールド感のよい革製を採用している。加えて、細かいピッチの出し縫い(アッパー、ウエルト、中底を取り付る際に施す縫製のこと)やハンドソーンウェルテッド製法ゆえに可能となる真性のベベルドウエスト(内踏まずを極力絞り込んだ仕様。土踏まずのアーチを包み込むようにして足を支持してくれる)なども「ヴィンテージライン」で採用されるディテールである。
 もちろん、これら手の込んだディテールは、このブーツにも見てとれるし、メダリオンやパーフォレーションの親子穴をひとつひとつ手作業で開けているなど、このモデル独自の手間のかけ方にも目をうばわれる。また、底側から見るとよくわかるのだが、採用されている木型が大胆なくらいに内振りで、アッパー全体も内ひねりの形状であるなど、人の足形に忠実なフォルムが徹底的に追求されている。そして手に取れば、見た目よりも軽いことにも驚くだろう。
 グッドイヤーウェルテッド製法ではもっと重くなるのだろうが、さすがハンドソーンウェルテッド製法である。しかも堅牢で、何度も底の張り替えが可能である点もこの製法の大きな利点だ。
 「ハンドメイドの靴には作り手の創意や心意気、鍛練を重ねた技術が感じられ、そこにたまらなく惹かれる」と語る江川氏だが、この端正でスタイリッシュなブーツを手にしたとき、私たちもまた、江川氏の創意、心意気、技術、そして靴への限りなく深い愛をしっかりと感じとることができるのである。

■メイド・トゥ・オーダーの概要(1足目をオーダーする場合のオーダーの手順)
1.右記お問い合わせに来店希望の日時を予約(http://www.h6.dion.ne.jp/~snug/)
2.予約した日時に、現在使用している革靴を持参、または履いて上記会場に来店
3.ハウスデザインのサンプルから好みのタイプを選択。飾り穴の有無、メダリオンのデザイン変更、飾りステッチの変更などオプション可(有料)
4.一流タンナーから厳選された約30種類の素材・カラーから好みのものを選択(仏デュプイ、仏アノネイ、伊カルロ・バダラッシ、英チャールズF.ステッドなど)
5.トゥの形状、底付け方法を選択(下記参照)
6.フィッティング。フィッティング用サンプルシューズを使用 ※補正(乗せ甲)などで細部調整(補正は無料)
7.注文。前金として販売価格の半額を支払う (受注製作のため、キャンセル無効)
8.仮縫いなし
9.通常、オーダーから1ヶ月〜2ヶ月半後に完成。商品受け取り時に販売価格の残額を支払う
●製法: ハンドソーンウェルテッド製法のみ
●木型: メンズはラウンドトゥ、エッグトゥ、セミスクエアトゥの3型(いずれもサイズは24.0〜27.0cmまでの0.5cm刻みで、ウィズはD、E、2Eを用意)、レディスはラウンドトゥ、エッグトゥ、セミスクエアトゥ、スクエアトゥの4型(サイズ、ヒール高のバリエーション有り)から選択可
※いずれも基本的にハウスデザインサンプルで採用している木型での受注となるが、木型の変更が可能なものもある
●ラインと価格: メンズ、レディスともに底付け方法の異なる2つのライン有り
スタンダードライン:メンズ70,000円〜、レディス45,000円〜
ヴィンテージライン:メンズ130,000円〜、レディス105,000円〜
※価格はモデルごとに異なり、オプション選択によりアップチャージとなる
※スタンダードラインのモデルをヴィンテージラインに変更した場合は+60,000円、ヴィンテージラインのモデルをスタンダードラインに変更した場合は+60,000円となる

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

HAND SEWN WELTED BOOT MAKER O.E.(ハンドソーンウェルテッドブーツメーカー オーイー)

■写真のサンプルシューズの概要
アイテム: フルブローグレースアップブーツ
モデル番号: #1
ライン: ヴィンテージライン ※スタンダードラインでの製作も可
製法: ハンドソーンウェルテッド
木型: エッグトゥ
アッパー: カーフ×スエード
ソール: シングルレザーソール(ヒドゥンチャンネル仕立て、ベベルドウエスト仕様、半カラス仕上げ)
ヒール: ピッチドヒール
カラー: ブラウン×キャメル
価格: 17万円
※スタンダードラインでの製作では11万円
※ディテールなどの変更はオプションとしてアップチャージとなる(各5,000円〜)

お問い合わせ:
hand sewn welted boot maker o.e.
TEL.03-3625-5528