メンズシューズ

08.02.29 UPDATE

アーカイブから蘇った小粋でリュクスなバイカラーモデル

 この数年、クラシック回帰のトレンドと呼応し、老舗ブランドが自社のアーカイブにあるヴィンテージシューズをもとに、それを復刻、あるいはリメイクしたモデルを展開するという動きが目につく。温故知新というべきか、そうした往年の名靴にはモダンデザインの靴に希薄な、ある種の風格や粋な佇まいがあって、それが今の視点から非常に新鮮に感じられる。また、こうした取り組みができるのは長い歴史をもつ老舗だからこそで、新興勢力との差別化という意味でなかなか有効な手法に思えるのだ。  そしてスイスの名門バリーもまた、もっかアーカイブモデルの復刻に取り組んでいるブランドのひとつなのだ。
 今日では衣料や鞄、革小物なども展開するラグジュアリーブランドとして名高いバリーだが、もともとは1851年、カール・フランツ・バリー氏がチューリッヒ郊外の自宅に靴工房を開いたのを事始めとする老舗だ。後に、履き込むことで容易に足に馴染む形状となるフットベッド「コルクフィラー」を考案したり、化学薬品メーカーを買収して製靴用接着剤を開発するなど常に先取的取り組みを堅持。1960年代には同社の技術協力から生み出された宇宙靴が、あのアポロ11号で使用されてもいる。そして、こうした数々の功績と高い品質が評価され、とりわけ欧米各国ではバリーは一目置くべきシューブランドとしてリスペクトされているのである。
 そんな名門が創業者の元自宅を「バリー・シュー・ミュージアム」とし、そこに保管された過去の製品や関連資料をもとに数々のアーカイブシューズを復刻しているわけだが、写真はそうした製品のひとつで、1926年に製作された靴を元にしている。
 この靴の第一の特長は、やはりバイカラーであろう。こうしたツートンのドレス靴はスペクテーターシューズ、コレスポンデントシューズ、コンボスシューズなどと呼ばれ、そのルーツは1840年代のイギリスとされている。また、19世紀末にリゾートシューズとして各国に広まり、1920年代から'30年代には上流階級のスポーツ観戦用シューズとして大流行。バリーもちょうどその流行の真っ只中に、このオリジナルを製作したわけである。ただしそのカラーリングについては、オリジナルがタン×ミッドブラウンであるのに対し、復刻バージョンでは今季のトレンドカラーであるグレイ×パールとし、より洗練された印象にした。また、木型もオリジナルのイメージを踏襲しつつも捨て寸をやや長くするなどし、よりスタイリッシュで洗練されたフォルムに変更されている。
 さらにアウトソールではアウトステッチ(出し縫い)とそのチャンネルを隠して、そこにガードロー(刻印による縁飾り)を施し、グレーカ(ヒールリフトの際に刻印された格子状の飾り)もエンボス。あえて刷毛目を見せる後染めで仕上げるなど、独自のこだわりが見てとれる。いっぽう、アッパーを見ると華やかなパーフォレーション(切り替えに沿って施される穴飾り)やピンキング(ギザ飾り)、エレガントな6アイレットといったディテールは当時のままで、独創的なパターンも限りなくオリジナルに近いものであることがわかる。ちなみに重厚な靴にも見えるが、実際には非常に軽く、ソールも薄く反りがよいなど履き心地はあくまでコンフォート仕様である。
 さて、こうしたスペクテーターシューズはクラシカルな佇まいがなかなか魅力的なのだが、我々日本人には伝統的に馴染みが薄いせいか、どう履きこなせばよいかと迷ってしまうものだ。だが、実際にはさほど難しいものではなく、例えばこの靴なら明るめ色の無地のリネンジャケットにポロシャツを組み合わせ、ボトムは白、またはグレーのコットンかリネンのパンツといったリュクススタイルなどが好マッチするだろう。意外性あるカラーリングのグラマラスなデザインではあるが、休日、こんな粋でクラシカルな靴を履きこなせれば、上級の洒落者をきどれるわけである。

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

BALLY(バリー)

アイテム:ブローグドオックスフォードシューズ
テーマ(シリーズ)名:BRISTOL(ブリストール)
モデル名:BESTOR(ベストール)
品番:3795063
製法:ブレーク(マッケイ)
アッパー:カーフ
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャンネル仕立て、刷毛模様仕上げ、グレーカ&ガードロー入り)
ワイズ:E
カラー:グレイ×パール ※他に同型・同価格でモノトーンのブラックもある
価格:7万7700円

お問い合わせ:

バリー・ジャパン TEL.03-3234-5160