メンズシューズ

08.05.03 UPDATE

アラベスクとアデレードの優雅なる交響

 フレンチシューズの最高峰と謳われるジェイエムウエストン(1891年、エドワール・ブランシャール氏によって南フランスのリモージュで創業)と聞けば、古くからの靴好きは、比較的早くから日本に紹介されたローファーとか、トゥの長いセンターシームが印象的な外羽根式のUチップとか、「ゴルフ」「ジャーナリストシューズ」などと通称されているカジュアルなUチップなどを思い浮かべるかと思う。これらトラディショナルなモデルは現在、いずれも「クラシック ライン」としてカテゴライズされ、定番商品として根強い人気を誇っているが、いっぽう、ミッシェル・ペリー氏が手掛けるモダンでスタイリッシュなモデルの数々も"新しいウエストン"としてすっかり定着している。男にはいまひとつピンと来ないかもしれないが、ペリー氏は非常に高名な婦人靴のデザイナーである。自身のブランドも展開しており、その独創的で、愛らしさと気品が違和感なく融合した靴は大変人気が高く、常に女性たちの憧憬の的なのだ。
 そのペリー氏をジェイエムウエストンがデザイナーとして迎え入れ、2001年に初投入した「ニュークラシック コレクション」は同氏らしい繊細さと品のよさがうかがえて好もしく思えたが、しかしそのロングノーズでシャープなプロポーションが従来からのベーシックなジェイエムウエストンに目を馴らされていた我々を大いに戸惑わせたのも確かだ。もっとも、時間とともにそうした抵抗感は薄れ、これらペリー氏デザインのコレクションはトレンドに敏感な人々も魅了。結果、ウエストンのもうひとつの魅力として定着したわけである。
 さて、写真はそうしたペリー作の1モデルで、昨秋リリースされ好評を得ている「コンティ コレクション」のオックスフォードである。このコンティ(CONTI)は18世紀に実在したコンティ王子に由来したものだという。調べてみると、フランス・ブルボン王朝の名族にコンティ家が存在しており、代々コンティ王子もいたらしいが、うちルイ・フランソワ1世(1717〜1776年)なる人物が最も有名であることがわかった。このコンティ王子はルイ15世の政治的腹心として秘密外交などを展開。また、政敵だったポンパドール夫人と、良質なワインを産出するブルゴーニュ地方のブドウ畑の買収で競い、勝利したというエピソードをもつ。ちなみに、あの「ロマネ・コンティ」は、実はそのヴォーヌ・ロマネ村の畑から産出されるブドウから作られているワインなのだ。また、このコンティ王子、どうやら絵画や装飾品の熱心なコレクターでもあったようだ。
 写真のモデルでもご覧のとおり、アッパーにUモカを模すようなダブルステッチとパーフォレーションが施されていて、その先端がアラベスク調に飾られている。また、羽根部分はノーブルなアデレード(竪琴)形なのだが、よく見ると、その先端はアッパーの裏側に縫合されているのに、両サイドはアッパーの上から縫い付けられているという、ちょっと凝ったデザインであることに気がつく。そして、このアラベスクとアデレードによって織りなされる流線のコンビネーションがなんとも優雅で、そこにペリー氏の真骨頂を実感するのである。
 ちなみに、アッパーには厳しく選び抜かれた大変良質なフレンチボックスを採用。本底には自社のタナリーにて半年以上もの期間、樫の樹皮とともに土中に埋められ、脂肪などのアク抜きがなされた最上級タンニンレザー(繊維が緻密ゆえ、摩耗に極めて強い)が使用されている。また、サイズが4mmピッチであるのは、このブランドの他のモデルと同様。加えて、ウィズも段階の設定となっている。
 ジェイエムウエストンの素晴らしさは実にさまざまあるのだが、ことに「素材」「製靴技術」「フィッティング」はあまたあるレディメイドシューズの中でも、疑いなく頂点にあるといえるだろう。そのうえ、ペリー氏によってこれほどまでの美しさまで身にまとってしまったのだから、ある意味、こんなに贅沢な男靴はそうそうないのでは、などと思ってしまうのだ。

文:山田 純貴 写真:綿屋 修一

J.M.WESTON(ジェイエムウエストン)

アイテム:アラベスクオックスフォード
品番:435
コレクション名:CONTI(コンティ)
製法:グッドイヤーウェルテッド
アッパー:VOCALOU BOX CALF(ヴォカルー ボックスカーフ)
ソール:シングルレザーソール(オリジナル・フルタンドレザー使用。ヒドゥンチャネル仕立て。バイカラー仕上げ)
カラー:ブラック、チョコレート、バーガンディの3色展開
製造国:フランス
価格:126,000円

お問い合わせ:

ジェイエムウエストン ジャパン
TEL.03-5413-1348
http://www.jmweston.com