メンズシューズ

08.06.13 UPDATE

新鋭ビスポークメーカーが
ビスポークエッセンス満載のレディメイドをスタート

 新顔の登場はないだろうと思っていたところに、ガジアーノ&ガーリングが現われました。英国のドレスシューズといえばロンドンにある老舗靴店、またはノーサンプトンの名門メーカーのオリジナルというのがお約束。英国靴の世界って、次々と新興勢が出現するイタリアとは随分対象的です。まぁ、だからこそガジアーノ&ガーリングの登場は、なんだかとても新鮮に感じられました。とはいえ、このブランド、その出自を知れば、実は英国靴の正統をしっかり継承していることが理解できるのです。
 ブランド名からも推察できるとおり、この新参ブランドはガジアーノ、ガーリングの2名によって立ち上げられました。まず、トニー・ガジアーノさん。この人は建築を学んだ後、靴のデザイナー兼モデリストとしてチーニー、ポール・スミス、ジェフリー・ウエストなどで活躍。その実績が認められたのでしょう、エドワード・グリーンの中興の祖であり天才的シューデザイナーのジョン・フルスティック社長(当時)に招かれ、同社でデザインやラストメイキングに努めました。後年、フルスティック社長は亡くなられたので、ガジアーノさんはフルスティックさん最後の愛弟子でもあったわけです。その後、ガジアーノさんはジョージ・クレバリーに移り、そこでビスポークに取り組むのですが、そのとき、ジョン・ロブ ロンドン出身で、当時はクレバリーのアウトワーカーとして活躍していたビスポーク職人のディーン・ガーリングさんと知り合います。
 ガジアーノさんはさらに、エドワード・グリーンに戻ってビスポーク部門を立ち上げるのですが、ガーリングさんに誘われ、2006年、ついにガジアーノ&ガーリングをスタートさせたという次第。こうした経緯から、このブランドが英国靴の正統的血脈を受け継いでいることと、ビスポークと深くかかわっていることがわかりますね?
 そんなわけでガジアーノ&ガーリングの本懐はビスポークといって過言ではないのですが、とはいえレディメイドが片手間ということではありません。それどころか、ビスポークで培ったノウハウが細部にまで生かされているのでしょう、どのモデルも高い技術に裏打ちされた極めて高品質の製品ばかりで、その佇まいには気品さえ感じられます。写真はそうしたレディメイドの1モデルで、今年の春夏から投入されているコンビネーションのフルブローグです。このスエード×グレインレザーはよくあるようで、実はあまりない組み合わせ。しかもいずれも上質な素材であるうえ、ローコントラストのバイカラーになっているせいか、決して派手さはなく、むしろクラシックで非常に端正な雰囲気が感じられて魅力的です。
 この素材使いもビスポーク的といえますが、それはデザインやディテールも同様。例えば、内羽根がアデレードであったり、履き口が小さく絞られていたり、ウエストがフィドルバック(ベヴェルドウエストの一種)だったり、ピッチドヒールが採用されていたり…と、各所にビスポークのエッセンスが満載。ながらくビスポークに深くかかわってきたガジアーノ、ガーリングの両名の真骨頂がうかがえる気がします。
 ところで筆者は、ガジアーノ&ガーリングの最大の特徴は木型にあると考えています。このモデルもそうなのですが、同ブランドの木型はどれも英国靴の基本スタイルに則りつつ、そこにフランス靴やイタリア靴に感じられる洗練や繊細といったエッセンスを控えめに取り込んでいるように思うのです。ミクスチャーというかユーロ靴というか、とにかくモダンなのです。似たような立ち位置にあるのがジョン・ロブですが、しかしロブほどの色っぽさはなく、そういう意味ではより英国靴らしい靴だともいえますが…。
 さて、昨今はビジネスのシーンでカジュアル化が進んでいて、ジャケットスタイルが許される職場も増えているとのこと。そうした着こなしに、このシックなコンビネーションオックスを合わせれば、落ち着きある大人の足元が出来上がること請け合いでしょう。しかも個性的ながら自己主張しすぎない控えめさが絶妙なあんばいですし、それゆえ女性の好感度も高いに違いありません。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

ほんのり膨らみを帯びたラウンドトゥは「エッグトゥ」と呼ばれる、英国靴伝統のトゥシェイプ。また、傾斜したヒールリフトは昨今、高級既製靴で散見するようになったピッチドヒールの1タイプだ。

優美なノーズライン、端正なアデレード(竪琴形の内羽根)、細く絞られたトップホール、小ぶりの親穴のパーフォレーションなど、この靴をドレッシーに見せるためのさまざまなディテールが見てとれる。

本底側から見ると、著しく内振りであることがわかる。また、ウエストはグッドイヤー靴ながらタイトに絞り込まれたフィルドバック仕様。と、いずれもフィッティングを高めるためのこだわりの表れである。

GAZIANO & GIRLING(ガジアーノ&ガーリング)

アイテム:コンビネーション・フルブローグオックスフォード
モデル名:ASTAIRE(アステア)
品番:DG70
製法:グッドイヤーウェルテッド
アッパー:カーフスエード×ピン・グレインレザー
ライニング:牛革
ソール:シングルレザーソール(素材:イングリッシュオークバーク)、ヒドゥンチャネル仕立て、フィドルバック仕様、半カラス仕上げ
ヒールリフト:ピッチドヒール
カラー:パイン×ダークブラウン
価格:17万6400円

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