メンズシューズ

08.06.20 UPDATE

超お値打ちハンドソーンウェルテッドシューズの最新作

 代官山と銀座で直営店を展開する高級紳士靴店「42NDロイヤルハイランド」(1985年、東京・代官山にて青木正氏により創業)がハンドソーンウェルテッドシューズのオリジナルブランド「42NDロイヤルハイランド エクスクルーシブ」をスタートさせたのは2003年秋のこと。その価格が破格のアンダー5万円(当時)と聞き、大いに驚いたことが思い出されます。諸物価値上がりの昨今、高級靴も価格高騰の模様ですが、実は当時でもハンドソーンウェルテッドのレディメイドといえば10万円オーバーが当たり前で、一部国産にアンダー10万円のものありましたが、それでも機械式の靴に比べると高額で、容易に手が出せるものではありませんでした。
 ちなみに靴における「製法」とは底付け方法、すなわちアッパーにソールを取り付ける方法のことで、このうち、ハンドソーンウェルテッド製法は19世紀後半にグッドイヤーウェルテッドやマッケイ、ステッチダウンといった機械式製法(これらの製法によって量産が容易になった)が登場する以前から存在していた、フルハンドメイドによる伝統的な製法です。今日に至るまでビスポークの世界で生きながらえてきましたが、この十数年の間で高級レディメイドにも散見されるようになりました。また、ウエルト(細革)を使用してアッパーとソールをすくい縫いと出し縫いで縫合する、いわゆる複式縫いであるのはグッドイヤーと共通ですが、すくい縫い、出し縫いのいずれも手縫い(出し縫いは機械縫いのものも多い)となるため著しく手間と時間を要し、したがって出来上がった靴は非常に高額に。しかも高い技術が求められることから、これができる技術者の数も限られるわけです。
 でも「わざわざハンドソーンウェルテッドのレディメイドを選ぶメリットとは?」となりますよね?そこで、この点について42NDロイヤルハイランドにうかがってみたところ、以下のような点が上がりました。(※経験に基ずくもので科学的根拠はないとのことです。)
(1)リブ(布製テープ)を中底に接着させる際の接着剤がソールを硬くする要因のひとつだが、ハンドソーンウェルテッドではそのリブを使用しないため、反(かえ)りがよく、履き心地がいい。
(2)そのリブ自体の破損がないなど、グッドイヤーなどに比し、概して耐久性が高い。
(3)手仕事によるすくい縫いでは、ひと針ごとに綾(あや)をかける(2本の糸を針穴の中で結ぶようにからめること)ため糸が緩みにくく、万一、糸切れしてもほつれて中底が破損することがない。
 と、このようにハンドソーンウェルテッドには、その価格に見合ったメリットがしっかりあるのですが、とはいえ高額すぎて一般の靴好きにはなかなか手が出ないのも事実。
 そこで42NDロイヤルハイランドは人件費の安い中国での生産を試みたのです。そう、42NDロイヤルハイランド エクスクルーシブが破格である理由が、これでおわかりいただけたかと思います。
 このブランドが立ち上がる以前の約2年間、同社の青木社長が中国に通い、某工房に技術指導を続けてきた結果、革の手断ち、手仕事による吊り込み(アッパーの成型)や各仕立て、そして底付け工程の半ばまでを中国で行い、それ以降の作業を日本のベテラン職人が担うというシステムが確立されました。そしてこれにより、超高級靴に引けをとらない品質ながら画期的なお値打ち価格が実現したという次第。なお、最近では他社にも中国などアジアで作られた高級靴が散見されるようになりましたが、筆者の記憶ではこの42NDロイヤルハイランド エクスクルーシブが先駆けだったはずです。
 すっかり前置きが長くなってしまいましたが、写真はその42NDロイヤルハイランド エクスクルーシブの最新作です。オーセンティックなデザインのサイドエラスティックスリッポンなのですが、甲中央に一直線に施された飾りステッチが要注目です。ブランドスタートから5年近くが経ち、中国の職人の技術がいかに高いレベルに達したかがうかがえるみごとなスキンステッチです。また、エラスティックのスリットを見れば、これも美しい仕立てですし、外からではわからないのですが、月形と呼ばれる芯材(一般に合成樹脂、あるいは一枚の革からできている)に薄い革を3枚張り合わせたものを使ってヒールカップの堅牢性を高める、といった工夫もなされています。
 ところで、この新作には新たに開発された木型が採用されています。実は同社には木型を製作できるスタッフがいて、これはその人が自ら削り出し完成させたものなのだそうです。そのポイントは以下のとおり。
(1)昨今人気のエッグトゥに。しかも控えめに膨らみをもたせつつ、快適な履き心地を追求している。
(2)トップホールを前方に延ばすことで、足元をスッキリと見せつつも程よいロングノーズに見せている。
(3)ヒールカップを小ぶりにし、日本人の足形(概してかかとが欧米人よりも小さい)によりフィットしやすいものにしている。
(4)ベヴェルドウエストは内踏まずをより細く攻めて、さらに快適な歩行を可能にしている。
 また、木型以外にも新たな仕様が。例えば、ライニングに伊イタリア製のカーフを使用。フルベジタブルタンニンでなめされた素仕上げで、しかもオイルアップが施されていないため吸汗性に優れているということから、今回が初採用となりました。さらに歩行時のキュッキュッという音鳴りを防ぐため、中底のコルクフィラーにフエルトシートを加え、さらに接着剤の使用を極力抑えるという工夫も取り入れたそうです。
 このようにさまざまな改良点も取り入れられつつ、インポートのグッドイヤー靴並み(か、それよりも安い!)の価格でリリースされた本品は、靴通にはもちろん、ハンドソーンウェルテッドシューズの入門者にもお薦めです。ちなみに「中国製で大丈夫?」と懸念される方もいるかと思いますが、製靴を担当する中国の職人らが非常に真面目であることと、仕上げを日本の職人に任せていること、42NDロイヤルハイランドで徹底的にクオリティコントロールを図っている、といった点から、品質と信頼性の高さでヨーロッパや日本のハンドソーンウェルテッドシューズに勝るとも劣らぬレベルになっているのです。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

サイドウォールが屹立したエッジのきいたフォルムながら、トゥにほんのりとした膨らみが。これは英国靴伝統のエッグトゥと呼ばれるディテールで、昨今、再注目されているトゥシルエットなのだ。

ナローなノーズだが、トップホールを前方に長く延ばしたことで、昨今トレンドの控えめロングノーズに見せる工夫が施されている。また、日本人の足形にフィットするよう、ヒールカップはさらに小ぶりに。

ハンドソーンウェルテッド製法ゆえに可能となる真正のベヴェルドウエスト(内踏まずが細く成型され、それに合わせてソールが深く削り込まれたウエストのこと)。この美しいプロポーションは垂涎ものだ。

42ND ROYAL HIGHLAND EXCLUSIVE(42NDロイヤルハイランド エクスクルーシブ)

アイテム:サイドエラスティックスリッポンシューズ
品番:EX801F
木型:C5
製法:ハンドソーンウェルテッド
アッパー:仏アノネイ社製カーフ
ライナー:カーフ(イタリア製。素仕上げ)
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕立て。ベヴェルドウエスト&ロールウエスト仕立て。半カラス仕上げ)
カラー:ブラックのみ
製造国:中国および日本
価格:5万4600円

お問い合わせ:

42NDロイヤルハイランド代官山店 TEL.03-3477-7498
42NDロイヤルハイランド銀座店 TEL.03-3569-0032
http://www.42nd.co.jp/