メンズシューズ

08.08.08 UPDATE

ショップのスタッフたちも買いまくっています!
ファッション達人が作りあげた超お値打ちブーツ

数年前、知り合いのファッションエディターから筆者に電話があり、「マグナムの坪内さんを知ってるか?」と聞いてきました。そこで「お会いしたことがない」と答えると、機会があったら絶対取材しろと主張するのです。彼自身もその坪内浩さんを取材したことがあるわけではなく、たまたまあるパーティで見かけただけなのですが、あまりにスタイリッシュで絶妙な着こなしに大変驚いたというのです。「雑誌とかにほとんど出たことがないみたいだけど、あの歳(※失礼ながら、当時、坪内さんは50歳台前半でした)であんなにスマートな体型の人ってほとんどいないよ。細身のジャケットやパンツですごいキメててさ。しかもコーディネートがまた、抜群にうまい。ファッションをよくわかってる人だよ、絶対」と、まぁ、普段あまり人を褒めたことのないそのエディターが珍しく大絶賛するものだから、ぜひお会いしたいものだと筆者はその気になったのでした。
幸い、その後、某誌の企画で初めてお会いする機会を得たのですが、その印象はあのエディターの主張どおりの大変見事なファッショニスタ。男も惚れ込むほどの伊達男ぶりなのです! さらに別の取材ではご自宅にもお邪魔し、そのときはご夫婦でさまざまなお話をうかがうことができたのですが、なかでも印象的だったのが坪内さんのお洒落遍歴でした。中学時代のアイビーからスタートし、高校の頃はロックスタイルに。'70年代にはサンローランなどのヨーロピアンスタイル、アメリカンアウトドアファッション、ラサンスなどのフレンチアイビーと変遷。'80年代はアルマーニやヴェルサーチにハマり、また'90年頃にはイタリアンクラシコを先取り。それに飽きるとデザイナーズやモード系、そしてドメス系やアメリカン×ヨーロピアンのミクスチャー系へ。
つまり、メンズファッションのトレンドとともにさまざまな着こなしを体験してきたわけですが、実はこの"こだわりすぎない自由さ"が坪内さんの真骨頂。「何事にも視野を広くし、凝り固まらず、いろいろと試していこうという考え方です。だって自由じゃないと楽しくないでしょ?」と坪内さん。まぁ、普通の人がこう言うと軽薄にしか聞こえませんが、穏やかに微笑む坪内さんがそう口にすると、言葉に哲学的な重さが加わり、思わず納得させられるのですから不思議です。
前振りが長くなってしまいました。ここでご紹介する「ヒロシ ツボウチ」は、そんなお洒落のオーソリティが今年、立ち上げたばかりの新進シューズブランドです。
実は坪内さんは靴の企画やデザイン、バイイングのプロフェッショナル。1977年以降、JUNやナイキ ジャパン、エーグル、パトリックといったそうそうたるブランドの靴を手掛け、1991年には現在、エンツォ・ボナフェやプレミアータのインポーターとして知られるマグナム社の創立メンバーに。現在、同社のジェネラルプランニングマネージャーとして海外ブランドのバイイングなど手掛けたり、エンツォ・ボナフェや同社オリジナルブランドのバサルティなどの企画&デザインに努めています。
そんな靴のオーソリティでもある坪内さんが満を持し、自身のブランドを立ち上げたというわけです。ちなみに自らの名を冠したのは「以前から温めていた思いを靴にしたいとの考えから」とのこと。過去30年間、あまたのブランドやショップのために靴づくりに努めてきたのですから、「自分の思いを靴に」というのも当然の欲求でしょう。
とはいえ、そこは坪内流。"こだわりすぎない自由さ"は、ここでも健在です。「クラシックをベースにしながら現代の視点で再構築したスタイル」なるブランドコンセプトも、要はトレンドを意識しつつ、さまざまなモダンスタイルを取り入れ、それをクラシックに融合させた靴づくりを目指すということなのでしょう。 そんな哲学はファーストコレクションの1モデルである、このブーツからも感じとれます。つまり穏やかなラウンドトゥの、ややボリューミーな木型がもっか最旬のアメリカンクラシックを感じさせ、また、レースアップブーツというデザインも現在のワーク&アウトドアブーツ・ブームを意識したもののように思われるのです。
木型をもうちょっと検証してみると、ボリューミーだと先述したのですが、一見するとそうでも、実は意外にもほどよく細身で、しかもコンフォタブルな内振りの形状であることがわかります。また、踏まず部分を絞り込み、ヒールカップを小ぶりにするなど私たち日本人の足形に適ったフォルムながら、靴全体の印象を洗練したものにするため、あえて甲の高さ落とす工夫もなされています。
また、ワーク&アウトドアブーツを意識してはいても、アッパーに美しく繊細なアンティーク仕上げが表現できる伊フラスキーニ社の上質カーフ「チプリア」を採用。甲にはなんと、ハンドによるスキンステッチのモカを施すという、まるで高級ドレスシューズのような贅沢仕様が採用されているのです。
ちなみに、この靴は国産のグッドイヤー。となれば、それなりのお値段と思いきや、なんと5万円台というのです。片足だけでもマシンの数十倍の時間を要するスキンステッチひとつとっても、手抜きのない実に見事な仕事ぶりがうかがえ、しかも人件費の高い日本で生産された靴がこの値段とは正直、驚きました。ちなみに驚いたのは筆者だけではないようで、これを取り扱っているセレクトショップでもこのブーツは大好評。しかも、思わず買ってしまったショップのバイヤーやスタッフが続出している模様です。フォルムとデザインにイマドキ感を取り込み、素材やディテールにこだわりも見せ、しかも品質は信頼のメイド・イン・ジャパン。で、お値打ちなんですから、買わなきゃって気持ちになるのも無理はありませんね。さすがはファッションと靴に精通した坪内さん。"オイシイところ"ばかりをてんこ盛りにして、洒落好き&靴好きたちをノックアウトしてくれたのです!

文:山田純貴 写真:平野 多聞

こうして真横から見ると、トゥがほんのりと膨らみを帯びていることがわかる。これはいわゆるエッグトゥと呼ばれるもので、英国のトラッドシューズにしばしば見られる伝統的な意匠なのだ。

甲にU字形に施されたライトアングルステッチによるモカ。メイド・イン・ジャパンでありながら、これほど見事なハンドスキンステッチを取り入れて、しかし5万円台というお値打ち価格にはビックリ!

よりワーク・テイストを高めるダブルソールを採用。5万円靴ながらヒドゥンチャネル仕様(本底のアウトステッチと、そのステッチを施すための溝を隠す仕上げのこと)というのも嬉しいポイントだ。

HIROSHI TSUBOUCHI(ヒロシ ツボウチ)

アイテム:Uチップ・レースアップブーツ
品番:HTV-0810
製法:グッドイヤーウェルテッド(オールアラウンドステッチ)
アッパー:伊フラスキーニ社製カーフ「CIPRIA(チプリア)」
ソール:ダブルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕様)
ウィズ:E
サイズ:5.5〜9(24〜27.5cm)
カラー:ブラック、ダークブラウンの2色展開
製造国:日本
その他:スキンステッチによるUモカ採用。フルレザーライニング
価格:5万5,650円

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