メンズシューズ

08.09.12 UPDATE

オランダから日本初上陸!
グレイブの靴はビスポーク的エッセンスが満載です

日本で展開されているインポートの高級紳士靴といえば、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアが主で、最近ではドイツ、オーストリア、ハンガリー、スペイン、ポルトガル・・・・。が、オランダというのは知りませんでした。恥ずかしながら、このグレイブなるブランドと出会うまで“オランダの靴といえば木靴”程度のイメージしか筆者にはなかったのです。
地政学からして、オランダの靴が「イギリスやフランスから影響を受けているのでは?」との推察はできますが、実際はどうなのでしょう? グレイブのディストリビューター、ヒーローインターナショナルにうかがったところ、以下のようなお話でした。
「国土の4分の1が海抜0m以下にあるため、湿地帯が多い」「1年のおよそ半分が不安定な天候」「オランダ人は一般的に体格がいい」といった理由から、同国の人々は丈夫で機能的なものを好む傾向にあり、イギリス人と同様、修理を繰り返しながら同じものを末長く使う習慣がある。したがって靴なら、堅牢で、修理が容易なグッドイヤーなどのウエルト製法のものが好まれてきた。しかしファッション、ことに紳士靴に関しては、やはりフランスやイタリアからの影響もある。
以上、納得という感じですが、今回、日本に初上陸を果たしたグレイブの靴を見れば、これがそっくりそのまま当てはまるのです。すなわち、製法はウエルト製法の一種である九分仕立て(工程の9割ほどが手仕事によるもので、アウトステッチなど一部の作業で機械を用いる製法)であるものの、ロングノーズのチゼルトゥというフォルムを見れば、どこかフランス靴やイタリア靴のような佇まい。まぁ、英国靴とフランス&イタリ靴のイイとこ取りという感じもしますが、それこそがオランダ靴の最大の特徴なのかもしれません。
と、ここでグレイブの紹介です。1898年創業(今からちょうど110年前!)といいますから老舗です。創業地はかつて製革産業の中心地だったラングストラート地方のウォーレックという町。英ノーザンプトンや伊トスカーナ州などもそうですが、製革産業が盛んということは靴づくりも栄えるわけで、実際、ラングストラート地方の製靴産業も存在。1890年代がそのピークだったそうですが、現存するシューメーカーはグレイブ(Schoefabriek H. Greve B.V.)のみとか。オランダ全体でも、紳士靴のメーカーは決して多くはないようです。
ところで、このグレイブ。オランダ王室御用達であることからもわかるとおり、元来はビスポークのシューメーカーです。したがって当然、ウォーレックの工房ではハンドソーンウェルテッド製法を駆使しつつビスポークを製作しているわけですが、いっぽう、ルーマニアに所有する工場ではレディメイドを生産。驚くべきは九分仕立てやグッドイヤーはもちろん、マッケイやモカシンといった製法までこなす実力を誇っています。
そんなダッチシューズの名門が日本初上陸。先述したように、今回お目見えしたのは九分仕立てによるレディメイドで、いずれも、あの紳士靴のカリスマプロデューサー、長嶋正樹氏(「竹川 圭のshoe人十色」第7回参照 )が木型の開発に参加しているのだそうです。したがって、日本人の足型に適った形状であるのはもちろん、足裏がインソールに密着するよう木型底部にゆるやかな立体感がもたせてあるなどの工夫もなされているのです。
さて、ここでこの木型が採用されたキャップトゥオックス(写真)を検証してみましょう。
ベーシックなデザインで、バルモラル(内羽根)の両サイドに施されたスワンネックステッチなどはブリティッシュトラッド的ディテールといえましょう。しかも革の切り替えがレベルソ仕立てで、ヒールカップを見れば、なんと切り替えのない、いわゆるヒームレスヒール! また、本底から眺めると、大きくインサイドに振られた形状の、いわゆるコンフォートフォルムで、ウエスト部分もアーチをタイトに絞り上げたべヴェルドウエストで、そこに計26本ものウッドペイス(木釘)が打ち込まれています。と、靴好きなら思わずうなってしまいそうなビスポーク的ディテールが各所に取り入れられているこだわりようです。ちなみに本底の接地部分に刻印されているのはロイヤルワラント。王室御用達の証明が誇らしげに見えますね。
アッパーは独ワインハイマー社のボックスカーフ。かの独カール・フロイデンベルク社が製革業から撤退した後、その技術とドイツボックスの伝統を継承した同社の製品は、この数年で高級シューメーカーがこぞって採用するところとなりました。ちなみに、このキャップトゥオックスは黒のみの展開ですが、他のモデルでは茶系なども存在。それらには伊イルチア社(こちらも高級名門タンナー!)の手染めのボックスカーフが採用されています。また、本底の革は、やはりドイツの名門レイデンバッハ社のオークバーク(タンニンでなめされカウハウドを樫の木屑などの中に長期間浸け込んで製革された高級ヌメ革)を使用。これはしなやかで吸汗性に富むが、耐久性と耐摩耗性に優れた、伝統的なプレシャス素材なのです。
と、以上、うんちく満載のこの靴。そのレア度と相まって、靴好きなら注目せずにはいられない逸品といえるでしょう。しかもヨーロッパ靴で、このグレードにして税込み12万6000円は正直、お値打ちではないでしょうか? すでにラウンドトゥのラインが「ユナイテッド アローズ」で展開中とのこと。近い将来、日本でも人気ブランドの仲間入りとなる可能性が大であるだけに、今のうちに先取り買いをお薦めしておきます。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

ノーズはチゼルシルエットと垂直に屹立するサイドウォールのシャープなシルエットだ。また、トゥキャップとヴァンプ、ヴァンプとバルモラルの各切り替え部分は縫い糸を隠すレベルソ仕立てになっている。

(写真左)トップホールからのぞくネイビーカラーのインテリア。(写真右)トゥとトップリフトには真鍮製のネイルが、また、ネイビーに染色されたウエストには古典的なウッドネイルが打ち込まれている。

GREVE(グレイブ)

アイテム:キャップトゥオックスフォードシューズ
品番:8202
製法:九分仕立て
アッパー:独ワインハイマー社製ボックスカーフ
ソール:シングルレザーソール(独レイデンバッハ社製オークバーク使用。ヒドゥンチャネル仕様。ベヴェルドウエスト。ロールウエスト。半カラス仕上げ)
カラー:ブラックのみ
製造国:ルーマニア
価格:12万6000円

お問い合わせ:

(株)ヒーローインターナショナル
TEL.078-252-3439
http://www.greve.eu