メンズシューズ

08.09.20 UPDATE

着こなしの脇役となり、コーディネートを引き立てる美しきスリッポン

エレガントで華はあるが、個性が強すぎてコーディネートが難しい。ベルルッティの靴をこうとらえ、実は「チャンスがあれば履いてみたい」との欲求を抱きつつも、自分には不向きと敬遠している人が少なくないのではないでしょうか? たしかに同ブランドのコレクションを俯瞰すると大変個性的なものが目につきますが、よくよく見れば、ほどよく個性を見せつつも、さほど奇抜といえないモデルが大半であることがわかります。まぁ、アクの強いものが目立って、それが全体のイメージになってしまうというのはしばしばあることですね。
ワンピースモデルの大傑作「アレッサンドロ」と並び、ベルルッティを象徴するスリッポンの「アンディ」もまた、ユニークなモデルです。しかし、ローファーの伝統的意匠とは異なるシンプルなサドルストラップとか、ロングノーズを強調する長いタングなどに独創性は感じるものの、客観的に眺めれば、ことさら奇抜な点はありません。トラッドなローファーのイメージから離れて見ると、実は結構ベーシックな靴なのではないかと筆者は思うのですが、いかがでしょうか?
ちなみに「アンディ」というモデル名は、あの現代アートの巨人アンディ・ウォーホル氏に由来しています。ベルルッティの現当主でデザイナーにして靴職人のオルガ・ベルルッティ女史が、パリのマルブッフ本店で靴の修行を始めてほどない1963年のある日。友人のイヴ・サンローラン女史に連れられたウォーホル氏が同店を訪ね、スゥ・ムジュール(ビスポークおよびフルオーダーの靴)をオーダーしたのです。そして、このとき対応した若いオルガ女史の才能を信じた同氏は、彼女にデザインの一切を一任。そこで、オルガ女史はウォーホル氏のイメージや同氏が履いていたパンツのシルエットなどを考慮しつつ、エレガントでスタイリッシュなスリッポンを創出しました。そして、それはその後、特別なゲストのためのスゥ・ムジュール向けのデザインとして使用されたのですが、大変好評であることから、1990年にプレタとして展開されるようになったという次第です。
ところで、その「アンディ」。実は、現在では木型が異なる複数のタイプが存在します。すなわち「クラブ・コレクション」の「アンディ」、「オルガV(トロワ)コレクション」の「アンディ」、「デムジュール・コレクション」の「アンディ」・・・・。いずれもデザイン(パターン)や製法などは全く同じですが、木型が異なるのです。
ここで写真をご覧ください。これは、この秋にデビューする「マジストラル・コレクション(magistral=仏語で『卓越した』『見事な』の意)」の「アンディ」です。既存の「アンディ」がスクエアトゥであるのに対し、この新顔はラウンドトゥというのがポイント。優美なロングノーズの、ややポインテッドなラウンドシェイプはチゼルのシルエットを微かに残しつつもほんのりとふくよかで、既存の「アンディ」よりも優しい表情です。ただしコバがスクエアシェイプで、モカ(実に見事な手縫いのスキンステッチ!)もスクエアである点は既存の「アンディ」と同様です。ちなみに、靴ひっくりかえしてみますと、この木型が大変著しく打ち振りで、土踏まずのアーチも厳しく絞り込まれたコンフォート・シェイプであることがわかります。しかも、意外にもボールまわりがゆったりしているので、非常にスリムな靴に見えても、実は多くの人の足にフィットしやすい形状でもあるのです。
もちろん、独自のスペックによってなめされたヴェネチア・レザーの繊細優美な風合いや、そこに施された優雅なカラー、素足にも心地よく触れるロング・タイプのレザー・インソックライナーなども、この「アンディ」の魅力といえましょう。さらに、カジュアルシューズとされるローファーながら、その品ある佇まいゆえに、週末の素足履きスタイルからスーツスタイルまで大変幅広いコーディネートに対応してくれる点も嬉しいポイントです。
さて、異形の靴と思われがちなベルルッティですが、こうしてこのスリッポンをとおして検証してみますと、実は抑制のきいた、主張し過ぎずのデザインであることがご理解いただけたかと思います。たしかに華は感じられるけれど、決してでしゃばることなく、コーディネートの脇役として服をしっかり引き立てて、全身の印象をクラスアップして見せてくれる。これこそがベルルッティの最大の魅力なのかもしれません。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

こうして横から見ると、ロングノーズのトゥが丸みを帯びつつも控えめなチゼル調のシルエットであることがわかる。また、さほど目立たないのだが、アウトサイドヒールカップに施されたステッチも個性的だ。

(写真左)ラウンドトゥだが、スキンステッチモカがスクエアであるため、スクエアトゥに見える。(写真右)補強のため、つま先に打ち込まれた真鍮製のペイス。よく見るとそれらでブランド名が描かれている。

BERLUTI(ベルルッティ)

アイテム:スリッポンシューズ
コレクション名:MAGISTRAL COLLECTION(マジストラル・コレクション)
スタイル名:ANDY(アンディ)
製法:ブレイク
アッパー:ヴェネチア・レザー
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕立て)
カラー:ブラック(インテリア、アウトソールはパープル)、ブラウン(インテリア、アウトソールはグリーン)の2色展開 ※パティーヌによるカラーリングも可
発売日:2008年10月上旬(予定)
価格:20万6850円 ※マジストラル専用木製シューキーパー:2万580円

お問い合わせ:

ベルルッティ・インフォメーション
TEL.0120-203-718
http://www.berluti.com