メンズシューズ

08.10.03 UPDATE

この極上ホールカットでサントーニの真価を実感してください

「器用貧乏」とは「なまじ器用なために一事に徹することができず、結局、大成しないこと」という意味だそうです(三省堂刊『辞林21』より)。この言葉のせいなのかどうかはわかりませんが、日本人はどうも一芸に秀でることを重んじるあまり、器用であることを否定的にやっかみ半分でとらえる傾向があるようです。しかしよく考えてみますと、器用であるか否かということは実力を評価するうえで、なんの基準にもなりません。思い入れもよいのですが、モノの善し悪しを客観的に見抜くことのできる本物の"目"を養うことこそが最も大切なのだと、筆者は思うのです。
そんな日本人特有の思い込みのせいでしょうか、実力や製品クォリティに比してまだまだ評価が尽くしきれないシューズブランドがあります。色彩に富んだクラシコブランド、トレンディーなカジュアルブランド、大人のレザースニーカーブームの火付け役となったスニーカーブランドなどとそのブランドイメージにも異なる思いを抱かれる方がおりますが様々なカテゴリー、テイストを自在に操ることが出来るサントーニ(1977年、伊マセラータ地方コリドーナにて靴職人アンドレア・サントーニ氏によって創設)に焦点をあて1枚のベールを解いてみることにしました。
確かにサントーニの"器用さ"には圧倒的なものがあります。トレンドを先取りしつつも、個性的でエレガントなプロポーションと優れたフィッティングを可能にする木型の開発力や、繊細で華麗な色彩の濃淡を表す「アンティカータ・ア・マーノ」と呼ばれるハンドペインティングなどは他社の追随を許さぬものがありますし、現会長のアンドレア・サントーニ氏と、かつてシャネルの靴製作部門の責任者も務めたカリスマ職人オリヴォ・メルロッチ氏のふたりによって職人たちに伝授されている縫製技術もまた、誠に素晴らしいものがあります。しかし「サントーニ=器用」のイメージを決定づけているのは、やはりこのブランドがあらゆる製法に長けているためでしょう。
今回、日本の総代理店オークニジャパンの協力をいただきつつ、サントーニが採用している製法を下記にまとめてみたのですが、ご覧のとおり、その数は主なものだけでも10種類以上。なかには筆者には詳細不明な製法もあって、説明が十分ではない点がありますが、どうぞお許しください。
いずれにしても、自社でこれだけの製法をこなせるシューメーカーは世界中探しても、サントーニ以外には存在しないはずです。だいたい、たいていのシューメーカーは1種類か2種類程度の製法しか採用していませんから、この"10種類以上"は実に常識を大きく超えたものといえるのです。これは、おそらくは各国のメゾンブランドやシューズブランド、セレクトショップなどからのさまざまなオーダーに応えるべく努力を重ねてきた結果なのでしょう。ただ、設備投資が並大抵ではないでしょうし、当然、技術者の育成にも相当注力していることは疑いありません。
なにしろ実力なくして、これだけの製法をこなせるはずはないのです。しかも、いずれもクォリティと信頼性が高く、他のシューメーカーからも一目置かれているのですから、これもう「器用貧乏」は当てはまらないわけです。
以上、サントーニというブランドの真価をご理解いただいたうえで、写真のホールカットをご覧ください。
これはドレス系のフラッグシップ・ラインで、熟練職人の手仕事によって製作される「ファット・ア・マーノ・ライン(「FATTO A MANO」はイタリア語で「手づくり」の意味)」の1モデルで、'04年にリリースされ大変好評であったため、今回、サントーニ東京限定で復刻されたものです。製法はブレーク1(別表参照)で、木型にはお馴染みの「ジョージ」が採用されています。捨て寸長めのスクエアトゥが特徴的なこの木型は、シャープでありながら、どこかグラマラスでセクシーな印象。すでにサントーニを象徴する木型として定着しています。また、アッパーにはこのブランドを含め、イタリアでも3つのファクトリーでしか取り扱われていないという大変希少なカーフ「オールド・イングランド」を採用。しかも、生なりの状態に御家芸とさえいえる「アンティカータ・ア・マーノ」で微妙なアンティークグレーを巧みに表現しているのです。
デザインはホールカット・タイプですが、ユニークなのはアイレット間のインターバルが長い3アイレットのプレーンな表情と、そのレースステイに施されたツインステッチです。これにより、古典的に見えがちなホールカットでありながら、ほどよいカジュアル感を表現。ドレッシーな着こなしにはもちろんのこと、デニムスタイルなどにも無理なくコーディネートできるのです。
ところで先日、電車の中でサントーニをスタイリッシュに履きこなしている若いビジネスマンを見かけました。木型はおそらく、このモデルと同じ「ジョージ」だったように思われます。確かに少々若い層向きにも思えるプロポーションなのですが、しかし、このモデルではオーセンティックなホールカットのデザインを採用したことで、落ち着きのある、より大人の味わいがうかがえるのです。これまでサントーニに興味を抱きつつも「自分には合わない」と躊躇されていた方。ぜひ、このモデルで、その真価を確かめてください。


サントーニが採用する主な製法

サン・クリスピーノ製法
木型に吊り込まれたアッパーの甲縁に中底の側面を交差させるようにしてピンポイント的にハンドで縫合し、そこに第1本底から第3本底までを出し縫いで取り付ける。卓越した技術を要する、極めて珍しい製法。

ベンティヴェーニャ製法
ノルベジェーゼの変則法で、耐久性と防水性に優れる。木型を吊り込まれたアッパーの全周にウエルトを縫い付け、その前半分(トゥからボールジョイントに至るライン)のみを約1cmのピッチで中底の輪郭に沿うように縫合。完成品ではアッパーを縁取りするウエルトに、ハンドによるすくい縫いが確認できる。ノルベほど無骨には見えず、しかしステッチダウン製法よりも重厚感のある仕上がりとなる。

ノルベジェーゼ製法
定義はメーカーによって微妙に異なるが、共通するのはマウンテンブーツなどに採用されているノルウィージャン製法をタウン仕様にアレンジし製法あることと、一般にアッパー側面のウエルト(またはソール)との境界にハンドによる鎖状のすくい縫い(ノルベステッチなどと呼ばれる)が確認できるという点にある。ダブルソールになるのが通常で、耐久性と防水性に優れる。

グッドイヤー・アルタッコ製法
この製法にはアッパーと中底をすくい縫いした後、ウエルトを使用せず、ステッチダウン製法のようにアッパーの甲縁を外側に折り、そこに通常、2回、出し縫いをかけてダブルソールで仕上げる「スターニョ・ペレ・グッドイヤー」と、一般的なグッドイヤー製法と同様、ウエルトを使いながらもハンドの比率を高めた「スターニョ・グッドイヤー」の2種類がある。前者の完成品では、ソールとの境界に沿ってアッパーを貫通するすくい縫いが確認できる。

グッドイヤー・ア・マーノ製法
すくい縫いはハンドだが、出し縫いのみマシンとなる製法。イタリア靴におけるグッドイヤーは、実はこの製法である場合が少なくない。

グッドイヤー・マシーン製法
通常のグッドイヤーウェルテッド製法のこと。

ブレーク1
クオイオ・ブレークのことで、早い話がマッケイ製法のこと。

ブレーク・ラピッド製法
一般にはブラックラピド製法と呼ばれる。マッケイ製法で中底を取り付けた後、そのアッパーとウエルト、本底を出し縫いで縫合する。マッケイ製法とグッドイヤー製法の混合製法というべきもので、マッケイより耐久性があり、オールソールの交換もより容易となる。

ボローニャ製法
ボロネーゼ製法ともいう。木型にライニングのみを吊り込み成型した後に、その上からアッパーを吊り込む(これ以降はマッケイと同じ工程をたどる)。これによりアッパーとライニングの密着性が高まり、マッケイ以上の反(かえ)りのよさが得られる。

イル・トゥボラーレ製法
モカシン製法のこと。アッパーを木型の下から吊り込み、その上にモカと呼ばれるフタ状の革を当ててハンドで縫合し、甲部を作る。この後、マッケイ製法などでソールが取り付けられる場合が一般的だ。

セメンテッド製法
接着剤を使い、アッパーにソールを取り付ける製法。サントーニではマッケイ製法などとの混合で採用されることが多い。

インジェクション製法
主にスニーカーなどに採用。接着剤は用いず、加熱や加圧により、樹脂などを溶かす、または発砲させるなどしてアッパーとソールを一体化させる製法。サントーニではマッケイ製法などとの混合で採用されることが多い。
注)全ての製法が国内展開はしておりませんのでご了承下さい。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

(写真左)サントーニの代表的木型「ジョージ」が足元をシャープ&セクシーに見せてくれる。(写真右)要所にネイルが打ち込まれたレザーソール。北イタリアの小規模のタンナー、プレゾット社の革が使われている。

SANTONI(サントーニ)

アイテム:ホールカットシューズ
品番:63646
ライン名:FATTO A MANO(ファット・ア・マーノ)
製法:ブレーク1(マッケイ)
木型:GEORGE(ジョージ)
アッパー:OLD ENGLAND CALF(オールドイングランド カーフ)
ソール:シングルレザーソール(本底=伊プレゾット社のタンニンレザー製。ヒドゥンチャネル仕立て。トップキウゾ仕上げ)
ウィズ:E
カラー:ブラック、アンティークチャコール(写真)の2色展開
その他:サントーニ東京限定モデル
価格:9万9750円

お問い合わせ:

サントーニ東京
TEL.03-3574-0923