メンズシューズ

08.10.10 UPDATE

最上級カーフの一枚革に御家芸の
スキンステッチを施した極上スリッポン

昨今のカジュアルシューズの傾向をみると、コーディネートにボリューム感をもたらすブーツと、逆に足元をすっきりと見せるスリッポンに人気が集まっていることがわかります。つまり二極分化しているのですね。しかも、春夏でもブーツがよく売れたり、秋冬でもスリッポンが人気だったりと、季節問わずの傾向もうかがえます。
そのようなわけで春夏に続き、この秋冬もスリッポンが好調なのですが、これはなにも日本だけの現象ではなく、例のごとくといいますか、イタリア発のトレンドなのです。ビジネススタイルのカジュアル化が進んでいるのだから、それに合わせる靴もオックスフォード(内羽根の短靴のことです)にこだわらず、ダービー(外羽根の短靴のこと)やスリッポンもでいいじゃないか、ということなのでしょう。たしかにノンネクタイやジャケパンなどのセミカジュアルな着こなしでは、ほどよくリラックス顔のダービーやスリッポンのほうがしっくりくるのかもしれません。
ところで、どちらかというとオックスフォードやブーツのイメージが強い英国靴ですが、昨今のこうしたニーズを受けてか、どのブランドもスリッポンに注力している模様です。これは名門エドワード グリーンも例外ではありません。なかでも、この秋にリリースされたヴァンプ・タイプの「ニューリン」には、ぜひ注目していただきたいのです。
木型にはスリッポン専用の定番「101」を採用。エドワード グリーンはスリッポン用の木型を数種展開していますが、この「101」は、ほんのりスクエアを帯びたラウンドトゥが特徴。しかも、この「ニューリン」ではトゥまわりのコバがスクエアであるため、スクエアトゥの印象が一層強いものになっています。また、両サイドはラウンドウォールながらしっかり屹立しているため、靴全体の佇まいはモダンで洗練されたものになっているのです。さらに木型全体の形状は、あの傑作木型「202」にも通じる、インサイドストレート&アウトサイドカーブの内振りスタイル。すなわち、人の足形に適うよう、つま先が大きく内側にねじれたフォルムになっていて、大変細身に見えるのですが、実はボールジョイントの幅は意外にゆったりしているので、万人の足によくフィットするのです。
ところで、この「ニューリン」で最も注目すべきは、アッパーが一枚革からなり(ライニングなどは施されています)、そこにスキンステッチ(革の表面から針を入れ、裏面に貫通させることなく、再び表面から針を出すという極めて熟達した手縫いの技術、およびその縫製のことを指します)を入れることでモカシンのように見せかけている、という点にあります。つまりアッパーはただ1枚の革からできていて、切り替えはヒール部分を除いて他には見当たりません。そのアッパーは肌目が繊細で、風合いに品のある大変上質なカーフ。傷や虫さされ、アザやシワなどを避けつつ、革の最も良質な部分のみを一枚革として使用しているのですから、これはもうなんとも贅沢な靴なのですね。加えて、甲にわざわざスキンステッチを施して、モカシン、すなわち木型の底革からアッパーを吊り、その上にモカと呼ばれるフタ状の革を縫い付けたデザインに見せかけるという手間のかけようです。おまけに、そのスキンステッチ。よく見ますと、Uチップの傑作「ドーヴァー」と同じライトアングルステッチなのです。2本の針を使い、薄い銀層の直下で、それらの針を交差させながらすくい縫いしていくという、これは大変難度の高いスキンステッチなのです。そして、その好例としてしばしば引き合いに出されるのが「ドーヴァー」で、早い話、ライトアングルステッチはエドワード グリーンの御家芸ともいえるテクニックであるわけです。
つまり「ニューリン」は、このブランドが誇るライトアングルステッチ・モカが醸し出す深い味わいが堪能できるスリッポンの逸品というわけなのですね。とはいえ、この新作の魅力は、このモカ縫いのみに留まりません。破綻なく均整のとれた木型、繊細な色の濃淡を表すトップグレードのカーフ、細部まで美しい仕上げなどなど、魅力尽きない素晴らしいスリッポンであると筆者は実感しました。もちろん、エドワード グリーンのことですから、外からでは目にできない部分も手が抜かれてはないはずで、その品質と信頼性の高さは申し分がありません。撮影時、この靴をあれこれと眺めているうちに、なにやらオーラさえ感じられてきて、筆者は改めて、この英国の名門シューズブランドの底力と真価を認識できた、そんな気がしたのです。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

(写真左)アッパーは一枚革からなり、切り替えとそのシームは唯一、ヒールカップに見ることができる。(写真右)こうして本底側から眺めてみると、この靴が著しく内振りの形状であることがよくわかる。

EDWARD GREEN(エドワード グリーン)

アイテム:ヴァンプスリッポンシューズ
モデル名:NEWLYN(ニューリン)
品番:61846
木型番号:101
ウィズ:E
製法:グッドイヤーウェルテッド
アッパー:カーフ
インテリア:フルレザーライニング
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕立て。ロールウエスト。ウエスト丸コバ仕上げ)
カラー:ダークオーク(写真)、ネイビーの2色展開
価格:12万9150円

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