メンズシューズ

08.10.17 UPDATE

イタリアの名門がクリエイターチームを一新!
そのデビュー作はモダン&スタイリッシュです

イタリアンマッケイシューズと聞いて、筆者がまず思い浮かべるのは、昔も今もタニノ・クリスチー(ミラノにてタニノ・クリスチー氏により、貴族向けの乗馬ブーツなどを製作するファクトリーとして創業)です。最近でこそ、多くのイタリアンシューズブランドが日本で展開されていますが、筆者が靴の原稿を盛んに書くようになった15、16年前、それらはまだ日本上陸を果たさずにいたり、日本に紹介されてはいても低い知名度に甘んじている、そんな状態でした。クラシコ・ブーム以前のことですし、英米ブランドが優勢という状況のなか、イタリアの高級紳士靴はマニアックな存在だったのです。
しかし、タニノ・クリスチーは別格でした。意外な感じもしますが、イタリアのほとんどのシューファクトリーは比較的歴史が浅く、新興と呼んで差しつかえないメーカーも少なくありません。いっぽう、タニノ・クリスチーの創業は1876年。ヨーロッパに近代的な製靴法が普及してほどない時期、すでにそのブランド史をスタートさせているのです。しかも、他社の多くがアメリカなどの下請けからスタートしているのに対し、タニノ・クリスチーはミラノの貴族を顧客にした靴づくりがルーツ。それもあってのことでしょうか、このブランドの靴はいずれにも品格が感じられ、高貴ささえ身にまとっているように見えます。
話が15、16年前に戻ってしまい恐縮なのですが、当時のイタリア製高級ドレスシューズはガッシリしたプロポーションの、ちょっとアクの強いデザインが主流だったのですが、タニノ・クリスチーの靴はそれらとは一線を画し、その繊細で優美なスタイルが大変魅力的でした。そして「タニノ・クリスチーの靴はマッケイ製法だから、こんなに繊細なのだ」などとしばしば言われたのです。まぁ、そんなこともあって「イタリアンマッケイシューズ=タニノ・クリスチー」なるイメージが筆者の頭の中に定着してしまったわけですが、しかし、このブランドの靴が醸し出す気高さは、今なお変わりありません。聞けば、一部にノルベジェーゼ製法の製品も展開しているとのことですが、多くはマッケイ製法によっており、しかも奇をてらうことなく、クラシックをベースにしたデザインに徹している点なども、この名門らしい個性であると思うのです。
ところで、そんな老舗がこのほど、クリエイターチームを一新したというのです。そして写真は、その第一弾として今秋リリースされたダブルモンクストラップであるわけです。タニノ・クリスチーのダブルモンクストラップといいますと、「ルドウィッグ」という名モデルがすでに存在していますが、この新作「プリンス」では新木型が採用され、よりモダンな趣を見せています。やや長くなったトゥは厚みがあり、控えめに膨らみを帯びており、これが"イマドキ"な印象です。ところが、これに呼応して甲にもボリューム感があるものの、トップ(履き口)が低くとられているため、靴全体は非常にスタイリッシュに見えるのです。また、そのトップホールは非常に小さく、したがってヒールカップも小ぶりなものに。これなら欧米人に比し、概して小さい日本人のくるぶしもしっかりホールドしてくれるでしょうし、歩行時のかかと浮きに悩まずにすみそうです。
本底を見ますと、マッケイ製法によるプレタシューズでありながら、まるでビスポークシューズに見られるベヴェルドウエストとまごうばかりにタイトに絞り込また土踏まずのアーチラインが圧巻です。しかも、そのウエスト部分が独立丘のごとく立体的に成型された、いわゆるロールウエストになっており、これがハンドペインティングによる美しいアンティークダークブラウンとともに、優雅さとクラス感を醸し出しています。さらに本底側から眺めますと、この木型が内側に大きく屈曲した、いわゆる内振りの形状であることもよくわかります。これは一般的な人の足形に適ったコンフォートスタイル。小ぶりのヒールカップやアーチのサポートと相まり、心地よいフィット感と滑らかな歩行をもたらしてくれるに違いありません。
「プリンス」の特徴は木型ばかりではありません。ややボリューミーなトゥに絶妙にマッチする大ぶりのトゥキャップと、そこに施されたメダリオンは、この靴の"顔"的ディテールと言ってよいでしょう。また、ダブルストラップのうち、上のストラップがトップラインに沿うように配されているため、これがまた、この靴を一層スマートな印象にしています。ヒールリフトは「ルドウィッグ」のそれよりも5mm高い3.3cmとし、インサイドのコーナーを面とりし、それを裾踏まずにしている点にも注目です。
と、このように検証してみますと、この新作はクラシックなディテールを残しつつも、非常に洗練された1足となっており、新生タニノ・クリスチーを象徴し、かつ「Prince(王子)」なるモデル名にも適った若々しいダブルモンクであることが理解できるのです。とはいえ、エレガントでノーブルであるのは従来のタニノ・クリスチーと同様。どんなに時代が移ろい、モードが変わろうとも、タニノ・クリスチーの基本スタイルと真価は不変不動なのです。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

(写真左)くるぶし小さめな日本人の足に好マッチする、小ぶりのヒールカップを採用。(写真右)著しく細く絞られたウエスト。アウトステッチとそのチャネルは、この部分のみがオープントラック仕様になっている。

TANINO CRISCI(タニノ・クリスチー)

アイテム:キャップトゥ・ダブルモンクストラップシューズ
モデル名:PRINCE(プリンス)
モデル番号:29553
製法:マッケイ
アッパー:カーフ(トップグレード。アニリン仕上げ)
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕立てで、ウエストのみオープントラック。ロールウエスト仕様。アンティークダークブラウン仕上げ)
ヒールリフト:半化粧タイプ(3.3mm高。インサイドコーナーに裾踏まずあり)
ピンバックル:クロームメッキ仕上げ(ブランドネームの刻印入り)
カラー:ブラック、ダークブラウンの2色展開。他にタニノ・クリスチー銀座店限定カラーのルビーノ(ハンドペインティングによるボルドーカラー)もあり
価格:18万9000円

お問い合わせ:

コロネット TEL.03-5216-6521
タニノ・クリスチー銀座店 TEL.03-5537-0555
http://www.taninocrisci.jp