メンズシューズ

08.12.26 UPDATE

サセッティのこの最新作、実は甲のタングがないのです!

SILVANO SASSETTI(シルバノ・サセッティ)

イタリアンシューズと聞いて、色気のあるスマート靴を思い浮かべる人は多いでしょう。それはシルバノ・サッセッティ(1964年、伊モンテサン・ピエトランジェリで靴職人シルバノ・サセッティ氏により創業)も例外ではありません。が、このブランドの靴には、加えて、どこか"生真面目さ"も感じられるのです。色気はあるのだけれど、それがほどよく抑制されている。そんな印象です。そして、この"あんばい"を好む日本人は少なくないのではとも思うのです。
写真はそのサセッティの最新作です。ワールド フットウェア ギャラリーのオーダーモデルで、同店側が「ショッキングデザイン」と「ゴージャスメダリオン」なる2つのテーマと、サイドモンク(ピンバックル付きの甲ベルトが、トップラインに沿うかのように高い位置に配されたモンクシューズのこと)をベースに「サイドから足をラップするような靴を」とのお題を提示。これらをもとにアンドレア氏(シルバノ氏の次男で、同ブランドのデザイナー)がデザインを手掛けたものだそうです。なるほど羽根が著しく小ぶりで、靴を内側から見るとシューストリングが隠れて、まるでサイドモンクのようです。しかもインサイドもアウトサイドも、その羽根革がバックステイまで伸びるクォーター(腰革。後革ともいう)とひと続きの一枚革で、ちょうどその革が踵(かかと)から甲に向かって足をくるむように見えます。まさに「サイドから足をラップするような靴を」とのお題どおりの設計なのですね。
また、この靴、実はタングがないのです! ブーツやカジュアルな靴にはタングのないタイプも存在しますが、ドレス系の短靴でタングをもたない靴は、正直、初めて見ました。当然「甲が痛くないの?」との疑問がありましょう。しかし「足をラップする」設計により、ヴァンプ(爪先革。枠革ともういう)それ自体が甲に十分ソフトフィットするため、タングは不要なのだそうです。実に、これぞ「ショッキングデザイン」。まぁ、タングの有無ですから、見た目のインパクトは控えめなのですが、それがまた、サセッティらしいとも思うのです。
ところで、サセッティの靴は「色気はあるけれど、ほどよく抑制されている」と先述しましたが、それはこの新作にも当てはまります。たとえば、ハンドによるアンティークフィニッシュ。いくつかのイタリアンブランドでは複数の色を塗り合わせる手法を採用していますが、サッセッティはイタリアの高級タンナー、イルチア社の「ヌアンセ」なる肌目の繊細なカーフを採用。ベジタブルタンニンでなめされ、グリーンで染色された後に一度、脱色が施されたこの革をサセッティは製靴後、ブラウン系などのワックスを使ってハンドで色付けしています。結果、ブラウンの下にくすんだグリーンが見え隠れし、言葉では説明しにくい独特の色に仕上がっているのです。ですから派手さはなく、どことなくワビサビさえ感じさせる、そんな印象です。宝石のような華やぎあるアンティーク調も魅力的ですが、私たち日本人にはサセッティ流のシックで繊細なアンティーク調も十分、魅力的に見えるのです。
ところで、この靴の個性はまだまだあります。「ゴージャスメダリオン」のお題にしたがい、アッパーのアウトサイドに施された優美な穴飾りがそれです。小穴に取り囲まれた各親穴をよく見ると丸穴と角穴があるなど、なかなか凝ったデザインのメダリオンです。また、インテリアにはサセッティ・カラーのボルドーの革が採用されていますが、ヒール部分のインソックライナーはアッパーと同色の「ヌアンセ」がU字形にカットされ、そこに穴飾りが施されています。実はこれと同じパーフォレーションが、先述したタングに代る役を果たすヴァンプにも施されていて、靴を真上から見ると、ソックライナーとヴァンプのおのおののパーフォレーションがつながり、ちょうど楕円を描くようデザインされています。つまり、インソックライナーにもアッパーと同じ素材、同じ色、同じデザインが取り入れられ、統一感が図られているのです。
ちなみに製法は、サセッティが特許を持つグッドイヤーフレックスを採用。これは基本的には通常のグッドイヤー製法と同じなのですが、インソールをより薄い革にし、ミッドソールにコルクに代えフエルトを使用。さらにインソールに接着する布製リブ(これが反りのよさを損なう要因のひとつとなる)のウォールを、後にフラットに寝かし直すという手間を加えるなどし、通常のグッドイヤーと同様の耐久性を保ちつつ、驚くほどの反りのよさ、履き心地のソフトさを可能にしたという製法です。なにせ一度、そのしなやかな履き心地を体験するとやみつきになるほどの快適さで、それゆえにサセッティにはリピーターが多いということです。
と、このようにこだわりがギュウ詰めされた、このサイドレースシューズ。サセッティでなくばなし得ない、さまざまな魅力に満ちた、きたる春夏の注目すべき傑作靴であるといえるでしょう。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

木型には定番「22963」を採用。ラウンドトゥなのだが、真横から見るとエッグトゥとチゼルトゥを混合させたかのようなシルエットであることがわかる。また、小ぶりの外羽根はロングノーズをさらに強調している。

(写真左)真上から見る、たしかにこの靴にタングが存在しないことがわかる。ボルドーの内装に縫合された、穴飾り入りの「ヌアンセ」のソックライナーも印象的だ。(写真右)本底はチョコカラーに総塗りされている。

SILVANO SASSETTI(シルバノ・サセッティ)

アイテム:サイドレースダービーシューズ
品名:2 TIE SIDE LACE(2タイ・サイドレース)
商品番号:SSW7791
木型番号:22963
ウィズ:D
製法:GOODYEAR FLEX(グッドイヤーフレックス)
アッパー:伊イルチア社製カーフ「NUANCE(ヌアンセ)」
インテリア:ボルドーカーフ(インソックライナーに一部、「ヌアンセ」使用)
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕立て、カラス仕上げ)
カラー:ブラック、ツンドラ(アンティークグリーン)の2色展開
価格:7万6650円 ※2009年3月発売予定

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