メンズシューズ

09.01.24 UPDATE

新進シュークリエイター福田氏が作る
パーソナルオーダー靴に見る真なる極上

HORLOGERIE BY YOHEI FUKUDA(オルロジュリ バイ ヨウヘイ フクダ)

16年ほど前のことです。筆者に靴に関するさまざまな知識を植え付けてくださった某靴店店主が、あるとき、筆者にこんな話をしてくれました。「木型から製作するビスポークシューズが紳士靴の究極だと思っている人たちも多いけど、実際に作ってみると格好の悪い靴が出来上がって、がっかりするような事も結構あるんだ。僕もそういう経験をしてきたよ。」当時はそう聞いても納得できなかった筆者ですが、今ではよく理解できます。
確かにフィッティングだけで言うと、木型から製作されたビスポークシューズの方が良いと思われる方が大半なのかもしれません。しかし、スタイルのバランスが崩れ、足に合わせすぎた事によって理想とする形とはほど遠くなったことに疑問を感じたビスポーク経験者も多いのが現実ではないでしょうか。そもそもビスポークという言葉は"Be Spoken"が語源で、注文者と製作者が一緒になって話し合いながら、注文者にとってベストなものを作っていくことを意味します。ですから、個人の木型を削って作られる靴だけのことを指すわけではないとも言えるでしょう。
「本来、紳士靴のあり方とは一定の歩行性を靴自体が実現させてくれる物であり、同時にいつの時代にもエレガントでなければいけないと思います。しかしながら、工業化が進んだ現代、足の為に考えられた靴作りというより、生産効率を優先した靴作りが世の中の大半をしめています。」という福田氏は、歴史的な背景やそこに隠された意味を研究し、既成靴と(木型から製作される)ビスポークシューズの良い点を取り入れ、革命的ともいえる新たな靴作りのスタイルを確立。彼の靴作りは100年以上前から存在するデザインや伝統技術を元に、靴全体の雰囲気やバランス、耐久性を追求し、流行に左右される事のない洗練されたオックスフォード(内羽式)をハウススタイルとしています。
そんなわけで、あえて木型の調整は行ってはいないものの、研究を重ねて完成させた木型をベースに、世界各国から厳選された最高級の革や材料を使用し、高度な技術で融合させることによって非常にクオリティーの高い仕上がりとなっています。
オーダーの際は、福田氏と注文者との話し合いの中で履き癖やスタイルに合わせてアッパーの素材やカラー、ウエルトの幅、ベヴェルドウエストやフィドルウエスト、ヒールの高さと形状、ネイル(化粧釘)の打ち方などが選択できるようになっています。また、人間の歩行の中で最も重要であるアーチライン(土踏まず)は注文者に合わせて製作されるので包み込むような履き心地を実現させてくれるのです。
さて、ここで福田氏の経歴を簡単に・・・・。
同氏は英国の靴の職業訓練校トレシャム インスティチュートで製靴の基本を学ぶと同時に、ジョン ロブ ロンドンの熟練靴職人イアン・ウッド氏に師事。卒業後はジョージ クレバリーの専属職人として約300足以上の修理をこなし、また、エドワード グリーン、ガジアーノ&ガーリング、フォスター&サンのアウトワーカーとして靴の製作にも携る。こうして英国靴のそうそうたるシューメーカーとかかわりをもつことで伝統的な靴づくりのノウハウを実践的に学び、習得。そののちに帰国し、2008年、満を持して自身のブランド「YOHEI FUKUDA」を立ち上げたのです。 今回、写真のサンプルシューズを目の当たりにし、福田氏は大変優れた実力をもつシュークリエイターであると確信しました。 そのサンプルシューズは筆記具や皮革製品も取り扱っている東京・白金台の高級時計店「ビジューワタナベ・白金台オルロジュリ」のエクスクルーシブモデルの1点で、アッパーにローコントラストのバイカラーを採用したストレートチップです。先述したように、我々日本人の足形にフィットさせつつも、美しくエレガントなシルエットを見せる木型は福田氏渾身の作。しかも控えめに丸みを帯びたチゼルトゥは、かつて同氏があまたの修理を手掛けたクレバリーの往年の作に通じるディテールです。しかも、この木型、よく見ますと、非常に大胆な内ひねり&内振りの形状です。これはいわゆるツイステッドラストと呼ばれるもので、このねじりが加えられた形状では歩行時、踵(かかと)の外側から親指の付け根に向かって重心が移動していくため疲労しにくいうえ、ヴァンプにシワが入りにくいというメリットもあります。とはいえ、機械での吊り込み(アッパーの成型)ではこれは不可能で、ハンドラスティングでなくしては得ない形状といえるのです。しかも土踏まずのアーチラインをタイトに絞り込んだ、いわゆるベヴェルドウエストの採用により、コンフォタブルなフィット感も実現。これが歩行をさらに軽快なものにしてくれるのです。
ちなみに福田氏の生産ペースは、なんと月産5足程度なのだとか。つまり、それだけ福田氏が手間を惜しまず、誠実に靴づくりに向き合っていることの、これはひとつの証しといえるのです。

文:山田 純貴 写真:平野 多聞

品あるシルエットのチゼルトゥはクレバリー仕込みというべきか。また、トゥボックスが低く、一の甲からトップラインに至る甲の立ち上がりがやや急峻なのも、この木型の特徴だ。高さ3.5cmのピッチトヒールにも注目。

(写真左)レースステイ左右のスワンネックはブランドのアイコンでもあり、ステッチではなく小穴で表したユニークなもの。(写真右)半カラスで仕上げられた本底。ウエストがタイトに絞られたグラマーなプロポーションに圧倒されてしまう。

HORLOGERIE BY YOHEI FUKUDA(オルロジュリ バイ ヨウヘイ フクダ)

アイテム:パーソナルオーダーサンプルシューズ
コレクション名:HERITAGE(ヘリテージ)
スタイル名:CELESTE(セレスト)
製法:ハンドソーンウェルテッド
アッパー:VICTORIAN CALF(ビクトリアンカーフ)
ソール:シングルレザーソール(英ベイカー社製オークバークレザー使用、ヒドゥンチャネル仕立て、ベヴェルドウエスト、半カラス仕上げ)
ヒールリフト:3.5cm高ピッチドヒール
サイズ:英国サイズ5〜9 1/2インチ(23.5〜28cm相当)
ウィズ:E
カラー:アンティークブラック(ヴァンプ))×アンティークバーガンディ(クォーター)
付属品:専用シューボックス、英国製シューバッグ、木製シューキーパー(英国製真鍮ヒンジ使用)、交換用シューストリング、ポリッシングクロス、乳化性シュークリーム、シューワックス
価格:29万4000円
納期:約3カ月

パーソナルオーダーの概要・詳細は下記まで。

お問い合わせ:

ビジューワタナベ・白金台オルロジュリ
TEL.03-3441-2237
http://www.bw-shiroganedai-
horlogerie.co.jp/