メンズシューズ

10.04.02 UPDATE

日本人靴職人の作品なのに、このブーツは
どこか"ゆとり"を感じさせてくれるのです

DAIKI BY TAKAYUKI MARUYAM(大喜 バイ 貴之 丸山)

目にした瞬間、「オールデンみたいだな」と感じました。これは、やや幅広のラウンドトゥのポッテリしたフォルムのアメリカンタイプの木型。しかもトゥがインサイドに向かって屈曲し、甲の外寄りが足を押さえ込むように低く、トップホールが大きくインサイドに偏っている。この、いわゆる内振り&内ひねりの形状であるのもオールデン的です。とはいえ無骨すぎることはなく、どこか品がありドレッシーにも見えます。この靴の製作者、丸山貴之氏はある顧客に「オールデンにエドワード・グリーンの木型『202』を足して2で割ったようなフォルム」(どちらもコンフォートタイプの名木型!)と言われたそうですが、この例え、なかなかに言い得て妙であるなと筆者は感心してしまいました。
その丸山さんは1975年、千葉県柏市生まれ。大学卒業後、某大手衣料量販店に勤務するも画一的な仕事に飽き足らず、「もっと自分を表現できる仕事を」との思いを抱くように。そこで仕事を退職し、浅草の某製靴学校に通い始め、やがて靴職人を目指すようになったそうです。某大手靴メーカーに転職し、そこで商品企画に従事しながらも、プライベートで手縫い靴の技術を磨き続け、本サイトでもご紹介ずみの津久井玲子さんのもとにも週1回のペースで1年間通うこともしました。
その丸山さんは2006年より、地下鉄淡路町駅近くの神田大喜靴店にて販売を担当するかたわら、注文靴の製作に本格的に取り組み始め、2008年、「大喜 バイ 貴之 丸山」ネームでパターンオーダーシューズのブランドをスタート。その成果の1足が、写真のレースアップブーツであるわけです。
木型については前述したので、素材について・・・・。肌目が繊細で非常になめらかな、このアッパーの革は近年、評価が高まっているアノネイのカーフ「ヴォカルー」であるとのこと。で、「トウがみごとにハイポリッシュされてるなぁ」と思っていたら、実はこのトウキャップにはコードバンが使われていたのです! このようなコードバンの使われ方を目にしたのは、これが初めて。アッパーが全部コードバンですと、どうしてもボールガースの屈曲部分がこわばった感じになりがちだったりしますが、このブーツではソフトな「ヴォカルー」を使うことでこの問題をクリアしつつ、光沢を強調することで靴全体の佇まいをクラスアップさせたいトウにコードバンを使ったわけで、これはなかなかのアイデア。絶妙のコンビネーションだと思うのです。ちなみにレザーライニングはなんとも小粋な赤で、それに呼応するように、半カラスのレザーソールも底前が真っ赤にペイントされてお洒落です。
ところで、このブーツが日本の職人の手によるものと聞いたとき、とっさに感じたのは「日本人の作品っぽくないぞ」ということでした。近年、日本にも優れたシュークリエイターが続々デビューしており、本コーナーでもそうした人たちの作品を何度かご紹介してきました。それらはいずれも細部まで実に丁寧に作り込まれた、非常にクォリティの高い靴ばかりなのですが、そのいっぽうで生真面目すぎて、ある種の"ゆとり"のようなものが少々不足しているとも感じるのです。丸山さんの作品もクォリティの面ではそれらと同様ですが、それでいて控えめながら色気があり、ユーモラスな雰囲気も感じられて、それが"日本っぽくない"印象をもたらしているのではないでしょうか? この"ゆとり"は、もしかしたらさまざまな人生経験を経た後、プロのシュークリエイターとして遅咲きのデビューを果たした丸山さんだからこそ醸し出せる"味"なのかもしれません。

文:山田 純貴 写真:猪又 直之

DAIKI BY TAKAYUKI MARUYAM(大喜 バイ 貴之 丸山)

■セミオーダーシステムの概要
受付期間:常時
受付店舗:神田大喜靴店(東京都千代田区神田小川町1-1)
フィッティング:サンプルシューズを使用
仮縫い:なし ※希望により、アップチャージに実施可
製作期間:2カ月以上
木型:ベーシックラストを使用し、個々人ごとに微調整
ウィズ:E、またはC
製法:九分仕立て
素材:仏アノネイ社製「ヴォカルー」カーフ全4色、英チャールズ・F.ステッド社製カーフスエード全3色から選択可。新喜皮革社製コードバンなどは希望により取り寄せ
ソール:レザーソール=ベルギー産ベンズ、ラバーソール=伊ビブラム製ダイナイト風ゴムソール ※他の素材、部材を希望の場合は応談
デザイン:全6パターン ※ディテールの変更、追加可
料金:9万4500円〜(短靴の場合。工賃含む。税込) ※素材、デザイン、ディテールの変更等で料金は異なる。 写真のシューズ 15万7500円

お問い合わせ:

神田大喜靴店
TEL.03-3292-0704
http://daiki-kanda.blog.ocn.ne.jp/
http://sites.google.com/site/
kandadaikikutsuten/


※この情報は、2010年4月2日(金)の情報です。