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VERBANO

今回は、伊勢丹新宿店で登場したヴェルバノのドライビングモカシンの紹介です。
スイス国境近くにある湖の名が由来のヴェルバノ社は1880年頃、伊ミラノ北方約20kmにある小都セレーニョで創業。これは同国の現存靴メーカーでは、かなり早い創業です。
1886年のある夜、ローマのスカラ座でオペラ「椿姫」が上演された折、ミラノの紳士・淑女らがこぞって同社の靴を履いていたことが話題となり、これを機にヴェルバノの存在がイタリア全土に知られるように。以後、1956年にローマ司教に靴を献上するなどし、高級靴メーカーとして広く認知されるいっぽう、1948年のロンドンオリンピックで計8個の金メダルを獲得したイタリアのナショナルチームが全員、ヴェルバノのモカシンを使用したり、1955年のミッレミリア1000マイルレースでスターリングモスとジェンキンソンのコンビが同社のレースモカシンを履き、みごと勝利に輝いたりと、スポーツシューズの分野でもその品質の高さが高く評価されました。 そして、そのミッレミリアで使用された靴を現代風に蘇らせたのが、写真のモカシンです。中敷きに、ブランドロゴとともに優勝時に使用されたベンツがプリントされているのが、往年のレースモカシンを継承するモデルであることの証です。

ところで、筆者は今回初めて知ったのですが、実はヴェルバノはイタリアンモカシンの礎を築いたブランドなのだそうです。しかも、同社は袋モカシンの製法において発案特許をもっており、本品の本底には、その特許のナンバリングがプリントされています。詳細はわからないのですが、そのモカのハンドステッチはオン・ザ・ラスト(木型に吊り込んだ状態の意)にて細かいピッチで施されており、本品でもその大変みごとなモカ縫いを目の当たりにできます。モカに沿ってヴァンプに畝状のクリースが出来ているのはひと針ごとに強固に糸絞めをしている証拠ですが、筆者の経験で、そのクリースがこんなにも細かい例を見たことがありません。艶やかで繊細な風合いのカーフが特別上質であることも要因でしょうが、すこぶる高い技術力なくして、このようなモカ縫いは到底不可能。これだけをもっても、本品を所有する価値は十分あると筆者は実感しました。
しかも軽く、反(かえ)りがよいうえ、足を包み込むような履き心地は本格的な袋モカシンならではですし、ドライビングにはもちろん、底前とヒールにしっかりとしたラバーパーツが設けられているので、ためらわず街履きができるなど、実用面も上々。他とはちょっと違うワンランク上のスリッポンをお探しの方に、これはお薦めです。

VERBANO(ヴェルバノ) ドライビングスリッポン 58,800円 
  モデル番号:4335。木型番号:475。モカシン製法。アッパー:SETA CALF(シェタカーフ)。カーフスエードライナー。オリジナルラバーソール&ヒール付きレザーモカシンソール。サイズ展開は5.5~8.5(24.0~27.0cm相当)。ブラック、ライトブラウン、ブラウン、レッド(写真)の全4色展開。イタリア製。 ※自社一貫生産。※同型・同価格でスエードタイプ(モデル番号43352)のダークブラウン、ダークブルーもあり。

問:オークニジャパン TEL.03-3874-0092 http://www.okunijapan.co.jp  伊勢丹新宿店 TEL.03-3352-1111

 

文:山田 純貴 写真:猪又 直之