CLOSE UP SHOES

F.LLI GIACOMETTI(フラテッリ ジャコメッティ)

私事で恐縮なのですが、靴の原稿を書き続けてきた過去20年ほどの間、何度となくトリッカーズ(1829年、ジョセフ・トリッカー氏により英ノーサンプトンにて創業)人気が繰り返されてきました(ここでいうトリッカーズとは、すなわち「カントリーコレクション」のブローグブーツを指すのですけれど……)。とはいえ、このところの人気ぶりは日本のみにとどまらない世界的なもの。しかも、これだけトリッカーズに“熱い視線”が送られているのも前例にないことのように思われます。 ジャケットやパンツのシルエットが細くなりますと、それに反比例して足元にボリューム感が欲しくなり、結果、存在感のあるトリッカーズの人気が盛り上がる。と、そんな傾向もあるようで、これは最近においても例外ではありません。しかも、このトレンドの発振源(のひとつではありますが)は、メンズファッションに新風をもたらしたNYの某デザイナーズブランドであるという見方もできるでしょう。アメリカントラッドをベースにしつつも、短丈のジャケットにくるぶし丈のパンツ、そして足元にはトリッカーズというシャープなスーツスタイルはとても新鮮、かつ斬新でした。 さて、今回紹介する、このトリッカーズの最新作。実は、その某デザイナーが別注した際に採用した木型が使われているのです。「カントリー」のブーツに採用されている定番木型「4497S」と比べるとボリューム感はやや抑えられており、トゥがセミポインテッドというのが特徴で、それゆえ、風格はあるがエレガントとの印象をもちます。

また、パターンはトゥチップの両ウイングがバックステイまで伸びたデザインのダービー(外羽根)タイプ。ロングウイングチップなどと呼ばれ、アメリカンシューズのオーセンティックなデザインであるため、アメリカンフルブローグなどとも呼ばれます。ちなみに、このデザイン。じつは、この1年ほどの間に注目が集まっており、トリッカーズに限らず多くのブランドが、この秋冬のコレクションにこうしたタイプを加えています。筆者の記憶の範囲ではありますが、こうしたロングウイングチップがトレンドになるのはかなり久しぶりのことで、もしかしたら、1970年代以来ではないでしょうか?
また、アッパーには、このアメリカンなデザインをさらにグラマラスに見せるグレインレザーを採用。これにダイナイトソールを組み合わせて、多少の雨なら気後れせず履くことのできる、実用的な仕様になっている点にも注目したいと思います。
昨今、ビジネススタイルのカジュアル化にともない、セミドレッシーな靴が売れ筋になっていると聞きますが、こうしたグレインレザーのロングウイングチップが人気再燃しているのも、こうしたファッショントレンドに則したものであるのは疑いないのです。

TRICKER'S(トリッカーズ)

アイテム:アメリカンブローグダービーシューズ
品番:M6837
製法:グッドイヤーウェルテッド(オールアラウンドアウトステッチ)
アッパー:スコッチグレインレザー(ツヤ出し仕上げ)
ライナー:フルレザーライニング
ソール:ダイナイト・スタッドソール(ダブルソール仕様)
カラー:ブラックのみ
価格:6万4,050円

 
問:ジー・エム・ティー TEL.03-5453-0033
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文:山田 純貴 写真:猪又 直之