CLOSE UP SHOES

F.LLI GIACOMETTI(フラテッリ ジャコメッティ)

靴好きにとり、この秋最大の話題がジョンストン&マーフィー(1850年、英国出身の靴職人ウィリアム・J.ダドレー氏により、米ニュージャージー州ニューアークにて設立。以下、J&Mと記載)の日本再上陸であることは間違いないでしょう。しかも、1872(明治5)年創業の老舗、大塚製靴による日本生産のライン(九分仕立ての「トラディショナル」と、撥水レザー×微発泡ゴムソール採用の「ビジネス」の2ラインがあります)などに続き、10月に待望の本国生産モデルも登場とあれば、ファンならずとも注目せずにはいられません。筆者の記憶では、たしか8年ほど前まで、ごくわずかながら日本に流通していた本国製ですが、この数年は目の当たりにできる機会がほとんどなかっただけに、とりわけアメリカンファッション好きにとり、これは本当に嬉しいニュースといえましょう。しかも、現存するアメリカンシューズブランドは多くなく、本国製を堅持するのはさらにわずかであることを思えば、最上級ラインのみとはいえ、いまだ本国の自社工場で靴作りを続けているJ&Mは、その存在自体が貴重なのですから。

前口上が長くなりました。写真が、その米国製J&Mの1モデルで、定番「ウエストチェスター タッセル」の日本向けタイプです。筆者は一見し、思わず「ああ、やっぱり米国製だな」と口にしたものです。日本製品のような精緻さはありません。大味だともいえるでしょう。が、要所はしっかりと作られていて、すこぶる堅牢そうなのは、同じく米国製を貫くA社やA′社の製品と同様であり、これこそが日本製やヨーロッパ製にはない“味”。メイド・インUSAは、やっぱりこうじゃなくてはいけません。

しかし、筆者が目をみはったのは木型です。トウが著しく内側に屈曲し、アッパー全体も内側にギュッとひねられたかのような、この形状はズバリ、典型的なアメリカンコンフォートラストです。しかも真上から見ますと、インソールとトップホールのポジションが全く一致しておらず、後者が前足部に向かって極端に内側にズレていることがわかりました、正直、ここまでトップホールが内側に振られたラストは、めったにお目にかかるものではありません。こうした諸条件により、体の重心がたえず内側へと移動するよう、この靴が歩行や立ち姿を矯正。結果、歩きやすく、長時間履き続けても疲労しにくい靴に仕上がっているのです。創業の年から現在まで160年以上にわたり、歴代の米大統領の靴を作り続けているJ&Mですが、単に名門であるというばかりではなく、このコンフォタブルな履き心地があるからこそ、ホワイトハウス御用達であり続けることができるのだと実感しました。 それにしても、このモデル。十数年の間に何度か目の当たりにした本国製J&Mの無骨さが、いまなお、しっかりと守りとおされていることを教えてくれました。また、タッセルスリッポンというとヤワな靴をイメージしがちですが、これは違います。この堂々たる風格。

JOHNSTON & MURPHY(ジョンストン&マーフィー)

アイテム:タッセルスリッポンシューズ
ライン名:IMPORT(インポート)
モデル名:WESTCHESTER Ⅱ TASSEL(ウエストチェスターⅡタッセル)
モデル番号:JM-2449
製法:グッドイヤーウェルテッド
アッパー:ヨーロピアンカーフ(光沢仕上げ)
ソール:シングルレザーソール(オープントラック仕立て。ロールウエスト仕様)
ヒールリフト:ラバー製トップリフト(オリジナル製)
カラー:ブラック、ブラウン(写真)、バーガンディの3色
製造国:アメリカ
価格:59,850円

問:大塚製靴 TEL.03-3459-8521
http://www.otsuka-shoe.com
http://www.boq.jp/hp/johnstonmurphy/index.htm
http://www.johnstonmurphy.com

 

文:山田 純貴 写真:猪又 直之