CLOSE UP SHOES

シャンガイ

まだ2ヵ月ほどを残す2011年ですが、本年登場した新作靴の中で、チャーチ(1873年、アルフレッド・チャーチ氏により英ノーサンプトンにて創業)の、この「シャンガイ」が最も注目されているモデルのひとつであることは疑いありません。先行してリリースされたイタリアなど欧米各国で大変な人気を呼び、日本でも流行に敏感な洒落者たちの間で話題に。なにしろ、英国の正統的なグッドイヤーシューズを堅持する名門のコンサバティブなイメージをもののみごとに覆す、このルックス!目の当たりにした筆者は正直、驚きを禁じ得ませんでした。聞けば、本国生産ではなく、イタリア製で、製法もブラックラピドとのこと。チャーチにしては軽快でスポーティに見えるのは、この製法によるところもあるのでしょう。
しかし、最も驚かされるのは、なんとも大胆なヴィンテージ風である点です。単に革に脱色やムラが施されているだけではありません。トウは反り上り、タングは歪み、キルトはめくり上り、トウやコバなどにはアタリが……。カーフ部分には擦り傷を模したスクラッチまで入っていますし、クラシカルなトノー形のピンバックルも古美調です。
本底を見て、またビックリ。革底にブランドネームを彫り込んだものかと思いきや、よくよく見れば、これはラバーソール。普通、人目に触れることのない本底までが徹底してヴィンテージ風で、摩耗や傷、汚れなどが、これまた大変みごとに再現されているのですから、この靴、“ただモノ(?)”ではありません。

要は、履き込んだことで得られる“味”が実にリアルに表現されていて、それがなんとも個性的であり、魅力的なのです。筆者は7、8年前、デザイナーズブランドを中心に、こうしたダメージ加工が施されたカジュアル靴が人気だったのを思い出しました。が、本品ほどリアルなヴィンテージ風はちょっと記憶にありません。
実は、本品には“元ネタ”ありき! 英国が中国の上海を半植民地にしていた1929年、チャーチが「SHANGHAI(シャンガイ=上海)」の名で売り出したモデルのうちの1足が、後年、修理に持ち込まれ、それを同社が工場に保管。その靴を再現したのが、今回の“NEW SHANGHAI”なのだそうです。と聞いて、ハイコントラストなバイカラーは、たしかに当時トレンドだったコロニアルデザインであると気づきました。
それにしても、この味わいあるルックスは唯一無比とさえいえる個性。一度目にしたら、忘れることができないほどです。しかも、世の洒落者たちが話題にするだけあって、昨今のカジュアルスタイルにもしっかりマッチするのです。たしかに、生真面目にも見えるドレッシーなチャーチも大好きですが、遊び心さえ感じさせる本品もとても魅力的。チャーチという老舗ブランドの懐の深さも改めて認識できました。

CHURCH'S(チャーチ)

アイテム:キルト付きモンクストラップシューズ
モデル名:SHANGHAI(シャンガイ)
製法:ブレイクラピッド(ブラックラピド)×セメンテッドヒール
アッパー:GLACE CALF(グレースカーフ)×NUBUCK(ヌバック)
ライナー:フルレザーライニング
ソール:オリジナルラバーソール(ブランドロゴレリーフ入り。オール丸コバ仕様)
カラー:ウォルナット×サンド、エボニー×ホワイト(写真)の2色
製造国:イタリア
価格:108,150円

お問い合わせ: エストネーション(有楽町店、銀座店、六本木ヒルズ店共通) TEL.03-5159-7800
エストネーション ビス新宿店 TEL.03-5326-9355
http://www.estnation.co.jp/

 

 

文:山田 純貴 写真:猪又 直之