CLOSE UP SHOES

英国靴の正統ブランドがスタッズをまとう、超個性派フルブローグで新境地を開拓!

昨今、日本の若いビスポーク職人の活躍には目をみはるものがあります。が、どちらかというとイタリアで修行した人たちが話題となりがちで、紳士靴の本場(?)、英国でキャリアを積んだ職人となると、これが意外にも少数派だったりします。新進の工房ブランド、マーキス(英語で「侯爵」の意味)を展開する川口昭司さんは、そんな数少ない“英国仕込み”のビスポーク職人なのです。
福岡県生まれで、現在32歳の川口さんは10代の頃から英国に関心をもち、高校時代に同国に旅行もしたそうです。いっぽう、モノづくりにも興味をもっていたことから、大卒後の2002年、靴職人を目指して英国に雄飛。製靴技術者を養成する職業訓練校「トレシャム・インスティテュート」に入学し、そこで靴づくりの基礎を学びました。
あるとき、ノーサンプトンの靴ミュージアムで古いビスポークシューズを目にし、その美しさに魅せられ、卒業後、あるビスポーク職人に弟子入り。自身のブランドのほか、ジョージ・クレバリーやジョン ロブ・パリのビスポークも製作する、その師匠からラストメイキングを含むハンドソーンウェルテッドシューズの全工程を学び、さらにその工房でフォスター&サン、エドワード グリーン、ガジアーノ&ガーリングのビスポークも手掛けました。その5年間を過ごした後、2008年に帰国。某英国ブランドのビスポークの製作に従事しつつ、同じく「トレシャム・インスティテュート」出身の靴職人である由利子夫人とともに昨年、東京・江戸川橋にマーキスを設立したということです。

では、写真のサンプルシューズをご覧ください。
これらを見るかぎり、マーキスの靴は英国のトラディショナルなパターンを踏襲しており(ただし、フルビスポークなので、オーダー次第でどのようなデザインにも対応可能とのこと)、これが英国好きの川口さんらしいのですが、細部を検証すれば繊細このうえなく、日本人らしい丁寧で卓越した手仕事がうかがえます。川口さん曰く「エレガンスには2とおりがあると考えています。ひとつは華美なエレガンスで、もうひとつはシンプルで作りの良さや技術力から醸し出されるエレガンス。僕が目指しているのは後者です。それは英国人の靴に対する美意識から学んだことです。」とのこと。たとえば、写真のフルブローグ。アッパーの切り替えなどに施されたミシン縫製の、なんとピッチの細かいこと! しかも、これに呼応してピンキング(ギザ抜き飾り)も誠に繊細です。筆者は仕事柄、多くの靴を目の当たりにしてきましたが、これほど美しく細かい縫製やピンキングは見たことがありません。聞けば、この靴のデザインが映えるに最上の縫製とピンキングがこれであったとか。いっぽう、パンチドキャップではカントリースタイルに適うよう、あえてフルブローグよりも太い糸を使用し長いピッチを採用(とはいえ、一般的な靴に比べれば十分すぎるほど細かいのですが)。と、スタイルごとに合わせ、縫製の表情にもきめこまやかな配慮がなされているのです。
また、筆者がとりわけ魅了されたのはトウのシルエットです。フルブローグでは真上から見ると英国らしいラウンドトウながら、真横からでは色気を感じさせるラウンドチゼルトウであるなど、見る角度によって微妙にシルエットが異なる絶妙なトウシェイプが採用されています。いっぽう、パンチドキャップではトラッドなラウンドトウながら、サイドのウォールを控えめに立ててクラシックなシルエットを編み出しています。
このほかにも小粋なピッチトヒールやベヴェルドフィドルウエスト、英国ベイカー社の伝統素材である厚口ベンズ「オークバーク」のアウトソールなど、じつに見どころ満載。佇まいも美しく、オーラさえ感じるほどのみごとな出来栄えにも大いに感嘆したものです。
ビスポークを楽しみにしている靴通は多いかと思いますが、なかでも英国靴が好きとの向きであれば、マーキス謹製のビスポークをオーダーする価値は十分あるかと思います。

MARQUESS(マーキス)

■ビスポークオーダーシステムの概要
受付期間:随時
受付店:マーキス(東京都文京区関口3-4-10-101)
フィッティング:マーキスにて実施
木型製作:削り出しにて製作
製法:ハンドソーンウェルテッド
パターン:フリー
アッパー:素材(カラーバリエーション含む)約25種類から選択可
アウトソール:英ベイカー社製オークバークレザー ※ラバー半貼りも可
仮縫い:オーダーから約4カ月後に実施 ※マッケイ製法によるトライアルシューズを約2週間、試し履きした後に木型の再調整、および本縫いを実施
製作期間:オーダーから約8カ月間
料金:318,000円~ ※専用シューツリー28,000円

■写真のビスポークサンプルシューズの概要
○FULL BROGUE OXFORD(フルブローグオックスフォード)
木型:MARQUESS SQUARE LAST(マーキススクエアラスト)
アッパー素材:EBONY CALF(エボニーカーフ)
ライニング素材:ベジタブルタンニンカーフ
アウトソール素材:OAK BARK BY J & FJ BAKER(英J&FJベイカー社製オークバーク)
アウトソール仕様:シングルソール、ヒドゥンチャネル仕立て、ベヴェルドフィドルウエスト、カラス仕上げ
ヒールリフト:ピッチトヒール、クォーターラバーピース(英フィリップス社製「フィリップススペシャル」デッドストック)

○PUNCHED CAP OXFORD COUNTRY STYLE(パンチドキャップオックスフォード カントリースタイル)
木型:CLASSIC ROUND LAST(クラシックラウンドラスト)
アッパー素材:VINTAGE OCHER CALF(ヴィンテージオーカーカーフ)
ライニング素材:ベジタブルタンニンカーフ
アウトソール素材:OAK BARK BY J & FJ BAKER(英J&FJベイカー社製オークバーク)
アウトソール仕様:シングルソール、ヒドゥンチャネル仕立て、スクエアウエスト
ヒールリフト:ピッチトヒール、クォーターラバーピース(英フィリップス社製「フィリップススペシャル」デッドストック)

お問合せ:マーキス TEL.03-6912-2013 http://marquess-bespoke.blogspot.jp

 
 

文:山田 純貴 写真:吉岡 広和