一本の万年筆に込められた フィレンツェ文化への思い。
1973年、イタリアのフィレンツェでレンゾ・サルバドーリによって創業したスティピュラ。当初は筆記具ではなく、イタリア国内および海外のファッションブランドに向けて、高級アクセサリーのデザインと製造を行っていた。これまでのアクセサリー作りのノウハウと、アルチザン(伝統職人)による卓越したハンドメイドの技術を生かして、筆記具メーカーに転向したのは1991年になってからである。 その際、ラテン語で"一片の藁"を意味する「スティピュラ」に変更している。この言葉の由来は、古代ローマ時代において、論争の終止符を打つための同意書に、1本の藁を引き裂いて相互に署名を行うという習慣があった。それに因んで付けられた高潔な名なのである。現在このような厳格な署名を行う場合は間違いなく万年筆ということになるだろう。 長い歴史をもつヨーロッパの老舗メーカーに比べるとまだ若いブランドであるが、フィレンツェの伝統的手法と厳選した素材を用い、職人が1本1本丹念に仕上げていく筆記具に決して妥協はなく、むしろ貫禄さえ漂う。 また、スティピュラは伝統技術の継承にも力を注いでおり、伝統工芸を学んでいる優秀な若者に作品の発表の場を与え、定期的に自社工房をアトリエとして提供したり、積極的に雇用するなど幅広くフィレンツェ文化の継承者の育成を実施している。 なかでも最高級ライン"ACADEMIA"シリーズは、伝統技術の真の継承者スティピュラのすべてが凝縮しているといっても過言ではない。なかでも、エカテリーナ宮殿にインスパイアされた「ピエトル イル グランデ」や、メディチ家興隆の立役者であるトスカーナ大公・フランチェスコ1世に捧げられた「フランチェスコ1メディチ」の美しさは別格である。まさに後世に残すべき、超絶技巧を用いた万年筆である。 "ACADEMIA"シリーズは受注生産による限定モデルであるが、通常モデルでも独自の繰り出し式を考案した「ダヴィンチ」をはじめ、カラフルな特製レジンのボディをもつ「イ・カストーニ」などの人気モデルを展開。イタリアの筆記具メーカーのなかでも実力派と言えるのがこのスティピュラなのである。
Text:Rohan Kurano
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