生活様式美 - 第3回 べにや民芸店

Back Number

気軽に入れて、心が和む、地方の空気いっぱいのお店

「民藝」「民芸」と、よく目にしますが、具体的に説明するとなると意外と難しいものです。簡単に説明すると、日常の暮らしのなかで長年にわたって使われてきたもので、手仕事で作られた日用品のことです。現在巷に溢れている大量生産の日用品ではありません。もともと民芸運動が起きたのは1926年(大正15年)のこと。柳宗悦が民芸品のなかに用の美を見出して活用しようと唱えたことに端を発しています。けっして高価な古美術品ではなく、基本的にはその地域の風土から自然発生的に生まれた民衆的美術工芸品ということです。
そんな民芸品を取り扱っているお店はまだ少ないのですが、青山通りの少し脇に入ったところに「べにや民芸店」があります。古美術店ではないので敷居は高くなく、ふらっと立ち寄れる気軽なお店です。ちょうど取材のときに若い女性のお客さんが数人いらっしゃいました。知る人ぞ知る名店なんですね。
このお店を始めるきっかけになったのは、ご主人が旅行をするのが大好きで、地方の荒物屋を覗くのが何よりも楽しみだったそうです。農閑期になるとその荒物屋に手作りの籠を納める地元の人がいたり、その地域ならではの生活の知恵を垣間見たりできたとか・・・。もともとご主人は古美術品には興味があり、モノを見る目は養われていたのでしょう。けっきょく趣味が高じて脱サラをして、昭和37年に東京の護国寺に最初のお店をオープン。当初は九州から東北までまわって買い付けをしたそうです。現在は南青山店と長野の小諸店の2店舗での展開です。
さて、店内を見てみると、地方の伝統的な焼き物がわかりやすく並んでいます。たとえば大分県の民芸の窯で無形文化財に指定されている「小鹿田焼(おんたやき)」や、愛媛県の「砥部焼(とべやき)」など、柳宗悦と縁のある窯の器も揃っています。ほかに地方の作家さんによる焼き物もあります。大きな器だけでなく、湯呑やマグカップ、箸、スプーンなどの身近な商品もあるので有り難いですね。面白いのは石川県七尾市の和ろうそくや、鳥取県の因州和紙(いんしゅうわし)を使った封筒や便箋など、プレゼントにも最適なものもあります。驚いたのは、編み組細工のまたたびボール! 猫が喜ぶあのまたたびです。福島県は昔から優良なまたたびが採れ、さらに編み組細工の手仕事が伝統的に行われているそうです。
このように店内には地方色がいっぱいで「日本はいいなあ〜」と心底楽しめます。また、店内奥のギャラリースペースでは定期的に作家さんの展示会も開催されるので、それに合わせて来店されるのもいいでしょう。大通りから少し入るだけで、こんなに心が和む空間があるなんて、ほんと嬉しいですね。

べにや民芸店
南青山店

東京都港区南青山2-7-1 ホームズ飛騨1階
TEL.03-5875-3261 FAX.03-5875-3262
営業時間:10:00〜19:00
店休日:水曜
http://beniya.m78.com

ページトップは練上手陶小箱/福山・掛谷康樹。大切な小物をしまったり、おもてなしに飴を入れたりとアイディア次第でいろいろな使い方が楽しめる。素朴ながら洗練された存在感が魅力。 そのほかに並ぶ品々もオーナーのセンスが感じられる品の良さが光る。

文:倉野 路凡 写真:猪又 直之