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暮らしのお店探訪- 第8回 木屋日本橋本店

江戸時代より受け継がれる
刃物研ぎの技術と本物の道具が堪能できる店

数多くの老舗専門店が建ち並ぶ日本橋。趣ある建物とモダンな建物が入れ混じる中央通りに建つ新ビルのガラス越しに、風格ある紺色の看板がひとつ。刃物の老舗として有名な木屋の日本橋本店です。店に入るとすぐ目に入るのが、刃物を研ぐ従業員の姿。入ってきたお客をもてなすかの様なカウンタースタイルの研ぎ場は、ひとつのパフォーマンスの様です。木屋に勤める男性従業員は、入社から日々、懸命に研ぎ師としての腕を磨いています。

木屋は寛政四年四月に本家の木屋から暖簾分けを許され、“打刃物木屋”として店舗を構えました。本家の木屋の主である林九兵衛はもともと藤原姓を名乗る家柄で、薬種商として豊臣家に仕える御用商人でした。その後、徳川家康の招きで当主の弟が江戸へ下り、大阪のお店と分かれたそうです。その際に姓の林を二つに分けて木屋と屋号を決めています。

木屋の本家の創業は、天正元年(1571年)に遡ります。明暦大火(1657年)には室町一丁目に移り、江戸時代には小間物、塗物、蝋燭などを取り扱っていました。暖簾分けをした木屋は打刃物木屋以外に、三味線木屋、化粧品木屋、文房具木屋、象牙木屋などがあり、軒を連ねて栄えていました。当時の様子は“室町に花咲く木屋の紺のれん”と「東京名物志」(明治34年刊行)に紹介されています。さまざまな物を取り扱う木屋が増えた理由は、「木屋本家と同じ商品を扱うことは許されない」というしきたりがあったからだそうです。

さて、現在の木屋日本橋本店は昨年の10月からコレド室町の1階に店舗を構えています(2014年春には以前の場所に戻るそうです)。取り扱っている刃物は、調理用ばかりでなく、グルーミング、ガーデニング、ステーショナリー、手工芸用などと幅広く、そのほかにも木屋が見立てた調理器具などが揃い、木屋独特の世界観が堪能できます。また、正規輸入販売を行っているフランス プジョーのミル製品、エーデルワイス料理鋏や爪切など、ロングセラーになっているオリジナル製品も人気のひとつです。最近少なくなった両刃のシェーバーで有名なドイツのメルクールの製品を取り扱うなど、料理用品以外も充実しています。店舗に来られない遠方の方にはWEBショッピングが便利です。

打刃物木屋としてスタートした木屋なので当然ですが、包丁や鋏の研ぎの技術は素晴らしいです。以前からテーラーや理容師、美容師の方が鋏を研ぎに出すという話は耳にします。刃物選びでわからないことは気軽に相談されることをおすすめします。コレド室町という便利な場所なので、会社の帰りにふらりと立ち寄ってみるのも楽しいものです。

木屋日本橋本店(キヤニホンバシホンテン)
〒103-0022
東京都中央区日本橋室町2-2-1 コレド室町1F
TEL.03-3241-0110
営業時間10:00〜20:00
http://www.kiya-hamono.co.jp

文:倉野 路凡 写真:猪又 直之 2011.01.26 UPDATE