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暮らしのお店探訪- 第13回 さる山

さる山

「antiques さる山」と嵌め込まれたガラスに書かれた青磁色の木枠の扉を開けると、時間の流れがゆっくりと変わる程よい空間が広がる。そこにはデザイナーであり、音楽家であり、店主である猿山修氏によって生み出されたものや、何か必然的な引力で時を経て集めて来られたものがそれぞれ自分の居場所を確保している。

ドイツ製の古時計や壁に掛けられたヴィオラダガンバも今なお現役で時を刻み音を奏でるという。ヨーロッパやアジアからここに辿り着いた椅子や箪笥や棚も決して眠ってはいない、覚醒して静かに息をしている感じ。美術館やギャラリーの個展、また演劇の音楽を手掛けることも多い氏の弦が空気を振動させている。前衛的なのに古典的な調べ。バッハがお好きという、なるほどと思う。
意外なのは、嗜好・趣味のはじまりは和骨董ではなく、マルセル・デュシャンだったということ。そして学生猿山の目指したものは美術ではなく法律であったということ。まさにデュシャンがそうであったように既成の枠内で闘うのではなく、違う領域・角度から美というものや概念を再構築できないかと、それをしかも、ほんの戯れにやってのけるのが面白いと。作品ではなくダダイズムやシュルレアリズムという一つの主義・スタイルの確立を、いわば悪戯的座興で成し遂げた鬼才。破壊とは無縁のものに見える静謐な猿山氏の手になる作品群の精神の原点は、デュシャンに在りと誰が見抜けるだろう。

もともとはグラフィックのデザインから、空間、プロダクトへと進んだという。消えてなくならず、長く残るもの、長く置いてもらえるものと考え及ぶと、物に行き着いたのだと。物のデザインを行うギュメレイアウトスタジオとして、また古陶磁などの食器類から古道具・家具まで扱う古物商として14年「さる山」は在る。新しくとも古くとも、物にある多くの痕跡や経年変化こそ愛でたい、出会いたいと願う方々には響く格好の場所である。

「セラミックワァクスフォアテイブル+ryoスプーンアンドフォーク」展 2011年10月8日(土)〜16日(日)13:00〜20:00(会期中無休)では
ふたつの新しいプロジェクトを展開。作家・井山三希子と猿山氏による2003年発表の食器シリーズ(この度、作家・濱中史朗主宰の山口萩大屋窯製造で新しく生まれ変わったもの) +金沢の金工・竹俣勇壱監修、仕上げ、猿山氏デザインによるカトラリーシリーズ(新潟燕のカトラリーメーカー田三金属製造)※第一弾は、サラダサイズのみのスプーンアンドフォークで開始。

<続く展示スケジュール>
喜多村光史展(陶器)「みどりと緑に」10月22日〜30日
「繕い」展(金繕いなどを施した古陶磁器を中心に展開)11月12日〜13日
辻野剛展「water」(ガラス器)11月19日〜27日
濱中史朗展「alternative white」(陶磁器)12月10日〜18日

さる山
〒106-0046
東京都港区元麻布3-12-46和光マンション101
TEL.03-3401-5935
営業時間:13:00〜18:00
不定休
http://guillemets.net

写真:猪又 直之 2011.10.03 UPDATE

 

左/自在に吊られた香炉
右/お馴染みKAORU(グリーンティポット)のある風景

潔く釉薬さえも引き算して生まれた作家・濱中史朗との作品

喜多村光史作 粉引きの鉢と銀の大匙

これまでの展示の案内もすべて
猿山氏のオリジナル・デザイン

左/何かとゆかりのあるヴィオラダガンバ
右/「ceramic works for table」で作家・井山三希子とコラボした作品、 こちらは左記どおり、まもなくお披露目展示を控えているものたち