06.07.31 UPDATE

 青山ベルコモンズを背にして、ハーゲンダッツの角を外苑西通りへ入る。このまま、まっすぐ歩いていけば、やがて左手に青山霊園が見えてくるはずだ。
"南青山"と聞くとすぐに海外ブランドの大型ブティックを連想するが、そういった派手な店があるわけでもなく、いたって静かな街並みである。逆に言えば、おのぼりさんは決して来ない、この街を「知っている人」しか歩かない道だろう。
 その静かな外苑西通り沿いに店を構えて25年。「オイスター」は、店名が書かれたサインボードも控えめなら、店舗面積もわずか15坪と、いたって控えめなセレクトショップである。
 「オイスター」創業当時の1980年前後といえば、数々の有名店が産声を上げた日本のセレクトショップの黎明期だ。今日、そうした店の多くは拡大路線を取り、店舗を全国展開したり、あるいはオリジナルブランドを細分化したりしている。もちろん、全国どこでも同じ品物が手に入るということは、最大公約数の顧客にとっては恩恵が大きい。しかし、その枠からはみ出す「本物の目利き」たちが、果たして金太郎飴的ラインナップで満足するだろうか。

オイスター
〒107-0062 東京都港区南青山3-2-18
TEL:03-3478-1918
営業時間:11:00〜20:00 定休日:無休
URL:http://oyster-aoyama.com/
オイスターの詳しい情報はコチラ→

文:泉川 由理

 「オイスター」が、浮き沈みの激しい服飾業界で支店を一切持たず、四半世紀の長きにわたり営業を続けている理由はまさにそのあたりにある。イタリアンカジュアルをベースに独自の目線で取り揃えた商品群は、流行に媚びず、しかし流行に取り残されず、常に筋の通った品質とスタイルを顧客に提供してきた。シャツのフライ(伊)、パンツのロータ(伊)、スーツ&ジャケットのベルベスト(伊)、靴のエドワード・グリーン(英)、カジュアルウェアのハイドロゲン(伊)……。その選球眼はいつの時代も通人たちを魅了し、「ここに来なければ会えない、買えない物を置いている店」として支持されているのである。
 顧客の中心は現在、30〜50代。日常的に最先端の情報に触れ、仕事も遊びも積極的にこなす広告代理店やTV局関係者。そうした、個性的で奥行きある人生を歩んでいる洒落人たちが、「オイスター」には自然と集まってくるのだ。
 折しも取材中に、某スタイリスト氏がカンタレリのコットンジャケットをリースしに来店した。いわく、「正統派スーツブランドが作ったジャケットなので、アンコンストラクティッドでも形が非常にきれい。色の抜き具合も絶妙です。昔から、ここにくれば必ずいいものが見つかる。この立地、この店舗面積で25年の歴史は、伊達じゃないですよ」。まさしくプロの目にもかなうセレクトなのである。
 この秋冬は、一流自転車メーカーのビアンキ社が展開するタウン仕様に最適なサイクリングウェアを取り扱うという。道交法も改正されて、自転車は今後もっともクールな移動手段になるだろう。もしもスポーツ好きな女性と街を歩く機会があったなら、ぜひビアンキのウェアで。凡百のスポーツウェアと一線を画すための、オイスターからの憎い提案である。