07.01.22 UPDATE


 皆が皆、大阪人が面白いと思ったら間違いだ。だからイタリアにシモーネ・ペロンのような男がいたって不思議じゃない。
 日本でデビューを飾ったときのインタビューで、シモーネは「ステディな彼女は一人。夜遊びはしないし、酒は嗜む程度」と語っていた。活躍目覚しいこの頃はどうなの?と数年ぶりの再開でまたもプライベートな質問をしたら、「今、あの彼女とは同棲している。生活は相変わらずです」。

 とにかく今、シモーネは忙しい。本国と日本だけでなく、モスクワ、ロンドン、イスタンブールと販路は広がっている。「ロンドンでのオーダー会を終えて、その足で日本に来ました」と笑う。
 家族で切り盛りしていた工房を拡張、現在は二人のスタッフがシモーネの片腕として働くが、朝は7時前に工房に入り、8時まで靴をつくり続けているという。「最近は無理をしてでもランチの時間をとるようにしました」
 新作を撮影しようとしたら、「ちょっと待って。磨かせてください」。磨き終わるまで、質問の答えは上の空だった。
 とにかく生真面目だ。生真面目から生まれる靴は、思わず笑みがこぼれるかわいらしさがある。例えば、"ノータイ"と名づけた新作。
「その名の通り、ネクタイを外したシャツをイメージしました。襟のカタチ、ボタン位置。納得できるまでとても時間がかかりました。一昨年の秋にはイメージはありましたが、プロトができたのはそれから半年後。その後も試行錯誤を重ねて、ようやく完成しました。ペロンの今を表現するのに、とても大切なアイコンです」
「もうひとつは、"トゥエルブ"。かつてのビスポーク・サンプルをベースにしたもので、年間12足しかつくりません。ピンクゴールドのボタン数は両足で12。僕が仕事を始めたのが、90年の6月12日なのです」
 特別な思いを込めた"トゥエルブ"はおそらく世界初となる、甲革サイドのステッチをアッパーの下に潜り込ませたノルベジェーゼ製法。ピンクゴールドに相応しい、エレガントな仕上がりだ。
 クラシックとモダンの融合。これは今をときめくつくり手なら誰もが理解している方向性で、シモーネも例に漏れない。違うのは、表現方法だ。多くのつくり手は、異性を意識した靴をつくる。グラマラスなフォルム、したたるようなレザーの質感はそういうことだ。イタリアの靴に多く見られ、それはラテン気質をストレートに表現して微笑ましい。
 一方シモーネは、靴というアイテムの新しさを純粋無垢に追求している。
古今東西、モテたいと思っている男はモテない。そして"恋愛戦線"から一歩引いた男が、なぜかモテる。"ノータイ"は後者に当てはまるが、そこまで読んだのだろうか。
 時間が許せばぜひ、と見せてくれた写真に納まった彼女はとてもきれいで妬けてしまった。…。そうか!! シモーネはもう、他の女性に興味がないということなのだな。

文:竹川 圭 写真:是枝 右恭 デザイン:クラスターワークス

ス・ミズーラ35万円〜(3ヵ月後に仮縫い、6ヵ月後に納品)

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