注文服はジャムセッション!?

「音楽はライヴにつきる」、僕はそう思っています。
自身でライヴを行ったり、音楽関係のアルバイトをしていた関係でジャンルを問わず数多くのライヴを観る機会に恵まれたりしていた学生時代の経験がそう思わせるのです。
その日、その時の様々な要素が化学反応を起こして爆発するダイナミズム、それがライヴの持つ最大の魅力でしょうか。
何が起こるかわからない緊張感は、CDなど録音済みの音源では味わえないライヴならではの感触です。
もちろん、「何が起こるかわからない」わけです、時には「はずれ」てがっかりすることもありますが、一方で魂を揺さぶる熱演を目の当たりにした瞬間には心底興奮します。
若い頃に比べると頻度は落ちましたが、現在もタイミングさえ合えば気になるミュージシャンのライヴに足を運ぶようにしているのは、その得難い興奮を味わうことでエネルギー注入するためです。
まぁ、ライヴ中とライヴ後に楽しい気分でアルコールを注入するのも目的のひとつではありますが(笑)

「スーツやジャケットは注文服につきる」、僕はそうも思っています。
大学時代にテイラードウェアや英国靴への興味を抱き何度かオーダー体験をした後、洋服業界に足を踏み入れて初めて企画に携わったのがGIEVES&HAWKESという英国のビスポークテイラー(もっとも彼らのセールスは既製服の比率が大きかったと記憶していますが…)だった経験がそう思わせるのです。
はじめに完成形があるわけではなく、クライアントひとりひとりのために一から服を作り上げる作業は正にライヴ、クライアントとテイラーが一緒になってアイディアや知識を交換してイメージを膨らませていくさまは正にジャムセッションです。
想像以上のものが仕上がるのでは!?という期待感は、既製服では味わえない注文服ならではの感触です。
「ジャムセッション」がうまくいけば、想像以上の「自分だけの一着」が仕上がる可能性は極めて大です。
そう考えるとやはり、注文服の最大の醍醐味は来店してオーダーが完了するまでの「会話」にあるのかもしれません。
つまり、クライアントにとっては、中身の濃い「ジャムセッション」が続けられるような相手、すわなち「会話」が弾んだりシンパシーを感じたりできるテイラーかどうかがとても大事になるわけですね。
どんなに腕がよくても、お互いの感性やこだわりが理解出来なかったら、なかなか「想像以上」の仕上がりにはなりません。
もちろん、腕がよくないというのは論外ですが…

これから注文服にトライしてみようと考えている皆さん、いろいろなテイラーさんのメッセージをwebsiteや紙媒体で、あるいは実際に足を運んで確認して、自分の感性やこだわりに一番フィットしそうな店を選んでみて下さい。
これ、仕立ての良し悪しや使っている服資材などより絶対に大切なポイントです!

ちなみに、僕がやっているA WORKROOMは、"EXCITING TAILORING"という言葉を標榜しています。
具体的にいうと、ただ良質の注文服を提供するだけの店ではなくて、音楽や映画や文学などEXCITINGなカルチャーと洋服が交差するような店を目指す、ということになります。 中でも、常にインスピレーションの源になっている音楽とは密接にリンクするような店でありたいと思っています。
そのあたりの詳細は、最近公式サイトをリニューアルしたのでぜひチェックしてみて下さい!
そういう姿勢の効果なのか、音楽を生業にしている方や音楽が好きな方に数多くご来店いただいているのは前回のコラムでも書いたとおりですが、そういう方との「ジャムセッション」はいつも以上に熱が入ります!
熱が入りすぎて、お得意様を長々と引き止める結果になってしまいご迷惑を掛けていないか少し心配ですが…

次に、店では常にテイラーとして「ジャムセッション」に参加している僕が自身の服を作る時はどうしているのか?ということについて触れます。
そんな時は、クライアントとテイラーとの一人二役で「ジャムセッション」を行います。
そして、常に触媒として利用するのが音楽です。
ということで、今回は以前に作ったJIM MORRISONにインスパイアされたブレザーとIAN DURYにインスパイアされたスーツを一例として紹介します。

細畝のコーデュロイとワイドラペルがサイケデリックなPコート風のブレザー。
ドイツ軍のデッドストックメタル釦を使用しています。
JIM MORRISONが愛用していたレザージャケットを見ていて発想がわきました。

ダブルブレステッドながら1ボタンというアシンメトリーのルックスが特徴的なスーツは、IAN DURYが1stアルバムのジャケットで着ていたホワイトのディナージャケットからアイディアを拝借しました。
ラペルの裏には"Still burning"という、これも音楽ネタのメッセージを刺繍で入れています。

このように、音楽に代表されるエキサイティングなカルチャーとリンクした遊び心あふれる注文服をクライアントと一緒に生み出すのが"EXCITING TAILORING"です。
音楽好きで注文服を考えている皆さん、ぜひ「ジャムセッション」をしにいらして下さい!

ところで、今年も多くのライヴに足を運びましたが、今のところはSUMMER SONICでのPAUL WELLER、横浜thums upでの山口洋、吉祥寺にて佐藤タイジとSIONと対バンしたTHE GROOVERSが私的なベスト3ライヴでしょうか。
10月末も、久しぶりにやってくるTHE NEVILLE BROTHERSを観に行ったり、日本を代表するロックバンドであるお得意様がライヴにご招待下さったりと引き続き音楽三昧!
11月、12月もすでに観に行くことが決まっているライヴがちらほら。
来る2009年は、観るだけでなく幼馴染と後輩とで最近始動したバンドのライヴをやりたいな。
その時は「はずれ」にならないように頑張ります。

※ページ頭のCDは12時位置から時計回りに

(1)"HEAVY SOUL" by PAUL WELLER
今年のSUMMER SONICのベストアクト、PAUL WELLERの1997年の快作!

(2)"walkin' in the shadow of life" by THE NEVILLE BROTHERS
この人たちももう終わったか!?と思っていた2004年に発表された会心のファンクアルバム。
彼らのライヴは幾度も堪能しましたが、今回は12年ぶりの来日なので何とも楽しみです!

(3)"ROUGH TRIANGLE"by THE GROOVERS
日本屈指のライヴバンド、THE GROOVERSのライヴ盤(2007年発表)。
実際のライヴはこの音源の10倍以上のパワーです。

(4)"made in Aso" by HIROSHI YAMAGUCHI
HEATWAVEの中心人物、フールでクールな山口洋の初ソロアルバム(2007年発表)。
好きが高じて山口さんに直接お願いしてA WORKROOMでも販売させてもらっています。
ソロ、バンドともにライヴの素晴らしさにも定評があります。

TEXT by 岡田亮二(A WORKROOM代表)   HP http://www.a-workroom.com   Blog http://aworkroom.exblog.jp/