|
「TYPE Wは私が最も気に入っているモデルのひとつです。文字盤のデザインはすべて私が考えました。今でこそ正方形の角型モデルにもアラビア数字のインデックスが多く用いられるようになりましたが、当時はどの時計メーカーにもありませんでした。また、サイズは最近の時計と比較すると、女性用かと思えるほど小ぶりですが、当時はこのぐらいのサイズが当たり前でした。小さな文字盤に、大きめなアラビア数字。このバランスが一番難しかったところです」
TYPE W/08はケースサイズこそ大きくなったものの、基本デザインはTYPE Wを継承しています。
「私個人としては当初のサイズでも面白いと思っているのですが、時代の影響もあり、多くの方が今一番よろこんでもらえるサイズにしました。ムーヴメントは手巻きから自動巻きに変更しています。そのために、やや厚みが増しましたが、腕にはめたときにはしっくりとなじみます。インデックスはTYPE Wではプリントでしたが、TYPE W/08はアップライトにし、ポリッシュ仕上げのケースにはシルバー、ローズゴールドのPVD仕上げのケースには同じくローズゴールドを用いています。文字盤が大きくなったことでセンターにスペースができたため、そこにはギョーシェ装飾を施しました。それによって全体が引き締まった印象になったと思います」。
インデックスのアラビア数字は、よく見ると12、3、6、9がほかの数字よりも小さくなっています。また、4から8までが「逆さま」になっているところも、一般的なアラビア数字のインデックスとは異なっています。なぜなのでしょうか。
「全部の数字を同じ大きさにすると、文字盤に余分なスペースができてしまいます。そのバランスを考えてこのようなデザインになりました。4から8までの数字が逆さまになっているのも、このほうがバランスがよくて落ち着くからです。結果的に、それがグレース・ファブリオにしかないデザインになりました」。
角型モデルではケースの四隅やラグなどに丸みを持たせたりすることも多いようですが、TYPE W/08は「エッジ」の効いたところに特徴があるように思えます。これについても山崎社長の明確な「時計哲学」が反映されています。
「角は角。丸は丸。それがグレース・ファブリオです。なお、PVDローズゴールド仕上げを加えたのは、時計の原点はゴールドにあると思うからです。今はステンレススティールが一般的で、ゴールドは高級モデルのための素材みたいになっていますが、昔は時計のケースはゴールドだったんですよね。TYPE W/08も時計の原点に戻るという意味からローズゴールドを加えました。ただし、無垢のゴールドを用いると非常に高価になってしまうのでPVD加工にしています」。

時計の原点といえば、グレース・ファブリオにはもうひとつ重要の意味があると山崎社長は考えているようです。
「食事に例えれば分かりやすいと思いますが、本来「安くて旨い」レストランがいいに決っているのですが、「高いけど味はそこそこ」、「旨いが高い」方が"威張りがきく"というのが最近の状況です。ここ何年かは、腕時計が非常に高額になってきました。そのため、多くの時計愛好家が楽しめるモデルがなくなってきてしまいました。このままでは腕時計離れが起きてしまう恐れがあります。もっと多くの人に、手軽に、質の高い腕時計を楽しんでもらえるようにしなければならないのではないでしょうか。グレース・ファブリオは機械式の入門時計ともいわれていますが、私はそれでいいと思っています。100万円の腕時計を1本買うお金で、TYPE W/08が5本以上買えます。服や靴に合わせて、ケースや文字盤の違う時計を使い分ける。それがおしゃれだと思っています。」
古いフォーミュラーカーをアメリカから取り寄せるほど車好きで洒落者、クラシックなデザインが好きだという山崎社長が、自信を持って送り出すTYPE W/08。シンプルなデザインが、かえって新鮮さを際立たせています。腕時計の何たるかを知る愛好家にも、これまでの腕時計に満足できない人にも、おすすめのニューモデルの登場です。
|